●『右向け左』(第2回目参照)


天才的な能力を持ってるすぎむらしんいちって作家がいるんだけど、
ただ、ほっておくとどこに飛んで行くかわかんないから、
枠をはめてくれってことで来たんだよね。

ドラマツルギーとか、ある種枠をはめて、
その中で出来ないかなってことで来て、
絵を見たらすごい絵描くから、あー、面白いかもしれない、
じゃあどうしようかってんで、とりあえず俺の中にある青春もの…、
自衛隊の青春ものって言ったら、反対されると思ったんだよ。
そしたらみんなが、
あー、面白いかもしれないって言って、
みんなで自衛隊に取材に行ったんだよ。
そしたらなんか、みんな、結構のってしまって、
じゃあそれで行こうって…。

俺の中でやっぱり俺の青春記だからね、ある意味ではね。
だから、今でもやっぱり結構好きだね。
『右向け左』はすぎむらしんいちっていうすごい才能ある作家が、
うまいこと処理したってのはあるけど…。

まあ、『右向け左』に関しては半分実話だからね。
登場人物も、名前も全部使っちゃってるし、
河合とか三輪とかね、あのまんまなのよ。
河合はデブだし、三輪は本当に右翼オタクだし、
でも、この漫画で出世遅れた奴はいないと思うよ。

これ書いて最初、防衛庁の連中が怒ったんだよ、広報の連中。
そしたらもっと上の連中、防衛大出た連中…、
彼らは電通とか博報堂とか行されてるわけ、
派遣されて勉強させられてるわけさ。
で、怒ってる連中って現場の連中でしょ、叩き上げの連中よ。
その叩き上げの連中が上にご注進して、
こんな漫画はけしからんてやるんだけど、
そしたらその上の防大出た連中がそいつらに、
お前ら何考えているんだって、
この漫画でどのくらい宣伝効果があるのかわかんのか、
自衛隊が。
これは何10億の宣伝費かかってるのと同じことなんだぞって、
ポーンと言って。
で、現実に志望率上がったりしたんだよ。

ある意味、自衛隊を揶揄はしてるけども否定はしてないって…、
しかも、けっこう明るい職場だぜってトコも見ようによっては見えるから、
意外と偏差値の高い連中ってのは、
そういうふうに冷静に取ってくれるんだけど、
頭の固い連中はもうダメだろうね。

(俺たち真剣にやってんのにって?)

馬鹿なこと言うなって、
俺が現場にいてどのくらい真剣にやってなかったかって(笑)。
俺ら、給料のことしか考えてねえんだから。

考えてみると、
ヤングマガジンで書いてる作品で嫌いなものないなぁ。
みんなそれなりに面白いって、いいなぁ。

その後は、『パッパカパー』だもん。
『パッパカパー』は趣味の漫画みたいなものだもん(笑)。
だけどよくできてるよな。
最近読み直したらめちゃ面白いよな。


●『パッパカパー』

【編集メモ】
* 『パッパカパー』 1992(H4)年1号〜1994(H6)年23号 ヤングマガジン 漫画/水野トビオ
  史村先生オススメのお笑い競馬漫画。

初めに作家在りきよ。いや、トビちゃんでしょ。
編集が連れて来て、いきなり、マグロウ見せられて…、
(『WORKINGCLASS』)
これ、なんとかなんないですかって(笑)。
これー? なんとかなるかぁ?
って言ったらさ、妙に味があるわけ。
これ、笑っちゃうんだけどさ、何がおかしくて笑ってるのか、
俺自分でもわかんねえんだよっていう絵なわけ。
だから、どうしようかって言って、
じゃあ、とりあえず競馬やるか、
で、1回目描いたら1回目であのおかしなコンビがハマっちゃったから、
そしたらコロコロ転がったからね。
うん、水野トビオの代表作だよねぇ。

トビオはね、天才なのか、凡才なのか、
ときどき、こっちがわけわかんなくなる。
ある瞬間、こいつはとてつもない天才じゃないかと思うんだけど…、
ふと冷静に考えると違うっていう、
ちょっとズレてるダケじゃんって感じなんだけど、
それがまた異様に面白いから…。
これと『右向け左』は、
書いてて本当に面白かったね、うん(しみじみと)。


●『右向け左』も『パッパカパー』も比較的長期連載になりましたね

そう、ああいう、ある種のお笑いものってのはね、
引きを考えなくていいから、
ダラダラやってていいから、週刊のほうが楽なの。
ピシッピシッってやんなくていいわけ。
行くとこまで行って、
そこでテキトーにわぁーってやっちゃえっていうか…、
だから意外とね、つまっちゃいなかった気がするね。

『右向け左』のほうは最終的には、長くなってくると、
すぎむらがもうやだって言い出すのもあるわけでしょ。
飽きてくるから。
もう自分の漫画描きたくなってくるってのがあるから、
そうすると途中からいろいろ厳しくなってきたけどね。
でもまあ、ボチボチいいだろうってことで辞めたんだろうけど。

(先生自身もかなり仕事がきつい時期だたんですよね/第4回目参照)

そうそう、だから、後はわぁーってやって休んだんだから、
で、息吹き返してきて、トビオで『パッパカパー』。
それは、北海道に行って、牧場にいたから、
馬って自然に言ったのかな。競馬って。
だからすぐ北海道に行かしたものな、主人公。
静内編って。

(トビオさん馬描けたんですね)

一応、描いたものなぁ。
いい絵になってんだよ、不思議に。
やっぱり、リキ入ってたんだろうな。
本人、自分は天才だと思ってるからね、あれは。

で、それで俺のヤンマガの歴史終わってんだよな。
田園いなご組』が最後かな。
(正しくは『ラフストーリー』)
それから講談社一切当たってないんだよ。
『パッパカパー』以降、全部こけたんじゃない。

【編集メモ】
*『田園いなご組』 1994(H6)年39号〜47号 ヤングマガジン 漫画/相馬雅之
  片田舎に大騒動が?と言うお笑い農業アクション画。
*『ラフストーリー』 1997(H9)年7号〜33号 ヤングマガジン 漫画/水野トビオ
  水野先生との2度目のコンビで挑戦した根性無し主人公のボクシング・ストーリー。



●モーニングには最初の担当編集者がいましたよね

さすがに俺、あれだけ逃げ回ったら、あいつ懲りるだろ。
俺はモーニングではやってないと思う。
さすがにね、連載3回投げたら、
あいつの中では俺のことを根性無しと思ってるから(笑)。
あんな、根性無しはいらないと思ってるよ、きっと(笑)。


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