●ヤンマガでは連載に切れ目がなかったですね


ずうっとヤンマガだね。
弘兼さんと俺と…、で、そうこうしているうちに、
青年誌描けるからってんで、弘兼さんはモーニングにも行くし、
小学館にも行くし、で、柴門さんも小学館へ。
そっちに行ってどんどん間口が広がって、
みんな他で花開いてって…、まあ、こっちでも花開いてんだけど…。

俺は原作で、すぎむら君とか水野トビオとか、
感覚の若い作家と組めたから、
まだ少しヤンマガでは長くなったっていうだけだね。
じゃあ、もう1回行くかっていうと、
俺のほうが年取りすぎちゃってるから…。
そうこうしているうちに、安達哲だとか、古谷実だとか、
とてつもない才能がボコボコ出て来るわけじゃないか。
油断してると天才すぎむらしんいちでさえ、もうすでに古いって
思われちゃうくらいのすごい作家が出て来ちゃうわけだから…、
やっぱりすごい新人の宝庫だからね、ヤンマガってね。

さすがに俺もいっぱいいっぱいで、
結果的に小学館行っちゃったでしょ。
あそこは青年誌の層が厚いから。
集英社はヤングジャンプがメインなわけだし、
講談社にしたって、アッパーズかモーニングでしょ。
で、なぜかモーニングってのは伝統的に俺のところに仕事来ないから(笑)。
俺と接点のある編集がいないってこともあるのよ。

(ヤンマガの臭いが強すぎたとか)

やっぱり、ずうっと講談社の中では、
ヤンマガってのは独特の、その梁山泊系の色ってのは残ってるよな。
保守本流ではなく傍流ではあるっていうかさ、
その傍流がやたら元気がいいんだけど…。
俺はそっちが好きなんだけどね。

編集部員含めて上役たちがさ…、
とにかく、あすこは自由にやらせとけって感じでさ、
それが俺には向いてたってことだろうな。

編集者とのつきあいも濃密だったよね。
でも、今、俺が小学館で一緒に酒飲みに行く編集は、
昔のヤンマガと同じ付き合いになってるわけ。
だから…、今、小学館で俺がつき合ってる若い編集なんかも
全部タメ口なわけ。
それはヤンマガ時代もみんなタメ口じゃないか。
ある意味、腹割って同じように楽しまないとってのがあるから、
小学館の連中も同じ付き合いになってるよね。

何がうれしいって、俺と一緒に酒飲むときに若い連中が、
うれしそうな顔してくれるのが一番うれしいわけだからな、
こっちとしてはな。
もっとも、俺がそういう人間としかつき合わないってのがあるから(笑)。


●ヤングマガジン時代を一言で言うと

あとのない編集と、
ある程度、ここでもう一踏ん張りしなきゃいけないって作家達が集まって、
怒ることも泣くことも笑うことも全部共有して、
作ったっていう本なんだよ。
だから…、最初に関わった作家も編集も、
俺達の本だっていう自負は持ってるね。
みんな今では散り散りになったけど、
パーティーで会うと楽しかったねって…。
その中では、結構怒鳴り合っていろいろやってるんだけど、
でも、今思うと、もうあれはないなー…、
あの時代はないんだろうな。

本当に全員が必死に生み出したっていうか、
作り上げたっていうかねぇ、うん。
年代的にもちょうど30歳ちょっとなのよ。
俺達がね。
だから一番元気で描いてきてて、
本当に俺もある意味では編集サイドに立って、
いろんなもの考えてることもあったし、今思うと楽しかったね。
俺の中では一番楽しい時代だったかもしれない。
ヤンマガと関わり合って創刊号起こして、それからの苦闘の時代がね。

だからあとは付録みたいなもんで、
きうち君達がやって、メジャー誌になったときに、
俺とか弘兼とか柴門さんに向かって、
その若い作家達がすごく気を遣って、
先輩達がいてくれたからですって、逆に言ってくれたわけ。
それがすっげえうれしいんだよ。
今でも行くとみんなけっこう気を遣ってくれるわけ。
もう描いてはいないんだけど(笑)。
やっぱりねー、伝統的にみんながわかってくれてるのかな
ってのがあるし、とにかく楽しかったんだよ。

つまんなきゃやってないんだろうけど、
とにかくなんか面白い奴っていうか、
俺達と合う奴ばっかりいて、自由にやらしてもらって、
うん、こんなのはもうないかもね。
だって本当に勝手にやってたからね。
あんな編集とあんな作家が揃って本ができるのかよって奴ばっかりだからな。
でも、なんだかんだ言いながら仕事は真面目だったからね。

仲良かったな(しみじみと)。
だから、いろんな意味で仲良きことは善き哉かな。
同じ危機感があるから…、
あれが売れてる本だと、
誰がどうだとか、やっかみとかあるんだろうけど、
とりあえず売れないわけだから(笑)。
そうするとやっぱりなんとかしなきゃ、なんとかしなきゃって、
みんな思ってたからね。

多分、弘兼さんに聞いても柴門さんに聞いても同じこと言うよ。
楽しかったよー、あの頃って。
金はないけど、本も売れてないけど、ただ妙に…。

30歳超えてるんだけど、20の青春時代みたいな思いがあるよな。
大学出たての若い連中たちが、異様に元気に楽しそうに
やってたっていう…、年は30過ぎてんだけど…。

この本がものになるのかならないのかわからないけど、
でもなんとかしなくちゃっていう、
異様な20歳前半の熱気を30過ぎて持ってて…、
だから楽しかったのだろうな。

※本文中( )内の表記、および[編集メモ]漫画街。氏名敬称略。
記録に誤りや漏れなどありましたら、ご指摘ください。

(第6回 終)

★次回は『北斗の拳』のお話をお聞きする予定です。お楽しみに。



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