●雑誌(少年誌、ヤング誌、青年誌など)の読者層の違いによって、
  作品作りで意識する部分はありますか?


どうだろう…。

それよりは、ジャンルっていうことに対しては、
とにかく新しいことをやりたいっていうのがある。
昔書いたのはやりたくない、つまんないってのがあるからね。
こだわりかどうかはわかんないけど、
とにかく自分で書いてて、ある程度新しい感覚がないと、
新しい感じがしないと、多分、外れるだろうってのがあるから、
やっぱり、常に何か自分にとっても、
あっ、これ、新しいな!
って感覚のものを捕まえるかどうかじゃないかな。
だから、読者層によって云々じゃなくて、
あんまり読者は区別はしてないんじゃないかな、そういう作品では。
むしろ、もっと新しいものをやんなきゃって…、
そうしたほうが絶対に当たるし喜ばれるし、
そういう感じじゃないかな。

でも、少年誌と青年誌で分けると、さすがにもう少年誌の中では、
俺の考え、少しズレてきてるかなってのがあるかもしれないな。
ここんトコ、ずうっと失敗してるからな、少年誌はな。

なんか…、少年誌って難しいわ(しみじみと)。
今考えてみると、年を取っていくとどうしても頭の中で作っちゃう。
でも、やっぱり青年誌だと、頭の中で作っても、
感覚が割と近いから、読者の間とのフィット感があるんだろうけど、
少年誌になっちゃうと、どうしてもズレが出てくるな。

(でも、受けたものと同じものをやれば、
 やはりまた受ける可能性もあると思うのですが。二匹目のドジョウとか…)


そうだね、確かに…。
ただね、書いてて面白くないと思うんだよな。
それはさっき言ってたことと矛盾するかもしれないけれど、
やっぱり読者に受けてナンボとは思ってるけど、
かといって、昔書いたのと同じようなもの書いて当たって、
果たして、それ、俺嬉しいかっていうと、
そんなには嬉しくはないんだな。
やっぱり新しいもので当てたいってのがあんのかな。
多分、モチベーションがもたないと思う、昔書いたのは。
あれ、前、書いたじゃんってふうになっちゃうと、
多分、自分が嫌になると思うよ。
多分、俺の中でね。

(作家さんによっては、
 ずっと同じものを書いてて幸せと感じる人もいるとは思いますが)


俺ね、それ、凄いと思う。
凄いっていうか…、
ある意味、続けるってことは、すっごいエネルギーいるし。
俺は、単純にそれができないってだけで…。
どっかで、俺、マラソンランナーじゃなくて、
短距離のランナーっていう感じがあるでしょ。
長期的な展望なんかまったく持たないで(笑)物語作るし、
もう、その回だけしか考えてないんだから(爆笑)。

それを考えるとね、
やっぱりね、10年も20年も同じ作品を書くっていうのはね、
俺は絶対無理だと思うし、
だから、長く続けている人って凄いと思うよ(しみじみと)。
そういう人たちは、俺が考える以上に凄い努力っていうか、
そのモチベーションを維持するってことが凄いことだと思うからな。

ただ、確かに当たっちゃってるものを持続する部分と、
新しく起こしてヒットするかどうかってリスクがあるわけ。
そのリスクを取るって怖さもあるだろうし、
だったら持続する苦しみを取ったほうがいいのかなって、
考え方もあるしね。
俺の場合は、書けなくなるからね、現実問題として。

(書けなくなるって言うのは…)

例えば、連載を5年くらいやるとキャラクターはもう決まっているわけでしょ。
キャラクターを動かし動かし、一生懸命あらゆるところへ突っ込んで、
書いて来たんだけど、もう、このキャラクターどこにも動かせん
って形になって来たときに、もう、いっぱいいっぱいだなぁ。
だから『HEAT』なんかでもさ、上海編をポーンと1巻やって、
あ、じゃあ今度は、ロシアにでも行かせればまだ1巻できるな
っていうのはあるんだよ、延命策としては。
でも、俺の中で、それを続けてても…、
もう本当に、頭の中に乳酸がたまって来て、
なんか、楽しくないんだろうな…(しみじみと)。

(でも読者とか、編集とか、描いてる漫画家さんも、
 なんでですか!? まだノッてるじゃないですか!? まだ面白いのに!?
 って場合もあると思うんですが)


俺の場合、先のこと考えてないから、やたらサブキャラ出してくるわけ。
キャラクターいっぱいね。
続けるってことは、新しい人物いっぱい出してこなきゃいけないわけでしょ。
そうするとやっぱりね、
絵描きさんのほうもだんだんきつくなってくるんじゃないかと思うよ。
腹ん中で、ごめんなさい、ごめんなさいって言いながら、
勝手に書いて、またこんなにキャラクター出して来て、
すみませんってあるもん(笑)。

だから、最長5年でしょ。
多分…、だいたい『北斗の拳』が5、6年か。
連載10年続いたってのはないもんな。

ま、今度やるのはね、歴史物だから、多分、下敷きがあるから、
これはもうじっくり書いていけば、
10年くらいになっちゃうかもしれないけど…。

なんだかんだ言って、俺、けっこう我がままなんだよね、
よく考えたら…。
自分の中でいっぱいだ、面白くない、もうダメだっていうか、
新鮮さが…、やっぱ新鮮さだな。
いつも書いてて、新鮮なものを書いてる
って感じがあるうちは楽しいんだけど、
ぼちぼち古いなぁってなって来た瞬間に、
手じまいぼちぼち考えるかなってのは、あるよね。

(そういうときは読者に対しては、ごめんなさいとかいう気持ちはあるんですか?)

いやぁ、だけど、やっぱりさぁ…、
結局、1〜2巻のころに比べて、
単行本も売れ行きって、減っていくわけじゃない。
ってことは、それだけ読者が減ってるってことだよ。
面白くないってことだから。
あれが、右肩上がりで巻数増える度に部数が増えていきますよ
ってことだったら、それはやめられないよね。
でも現実に、やっぱり読者が減っていくわけだから、
単行本の発売部数が…、
そうすると、やっぱり、俺のテンションっていうか、
作品のクオリィティーと一緒に、
やっぱり同じ歩調で読者も下がってくるのかもしれないよ。
それで、もう…、
あ、これじゃあ、もうダメだっていうのがあるんで…。

ただ、確かにコアなファンっているから、
終わったときに必ずなんで終わったんだとか、
そういうのはいっぱい、どの作品でもあるよね。

でも、そういうときに終わるのが、華なんじゃないかなとも思うしね。


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