【質問と解答】

Q:美術大学でデザインについて勉強しながら漫画家を目指している者です。漫画専門学校のように漫画について専門的に学べる環境で漫画家を目指したいと考えていたのですが、周囲からの理解が得られず、一般的な大学よりは漫画に近いことが学べるのでは、と美術の大学に進学しました。現在では担当の方に作品を見て頂きながら新人賞での受賞を目指している状況なのですが、大学の課題の量が多く正直言って学業との両立ができていません。学生である以上、大学での課題や制作を優先するべきだとは分かっているのですが、漫画の制作に全身全霊をかけて集中したいという思いが勝ってしまいます。正直、今からでも大学をやめて漫画の専門学校に通い、漫画の制作に打ち込める環境で漫画を描きたいと思っているのですが、その反面、大学に通いながらも受賞やデビューをしている方々もいるのだと思うと単に自分の努力が足りないだけなのかとも思ってしまいます。大学への入学は自分で決めたことですし、大学をやめて専門学校へ行きたいというのは学業と漫画を両立できないことから逃げたいだけなのではないかという思いもあり、どうすればいいのか分からなくなってしまっている状況です。周囲に相談したところ、やはり「大学は出たほうがいい」「漫画は卒業してから描けばいい」という言葉を多く頂きました。漫画の業界に詳しい方の意見も頂けたらと担当の方に相談しようとも思ったのですが、お忙しい中でこういったお話に付き合わせてしまうのも申し訳なく、なかなか切り出せずにいたので、この場で質問させて頂きました。



A:あなた自身も薄々思っているように、漫画専門学校に進学していたら今頃‥‥、と大学と漫画を両立できない現状から逃避しているだけのように感じられます。漫画専門学校を理想化しすぎていませんか。通いさえすれば自動的に漫画の技術が身につき、エスカレーター式にプロ漫画家へのコースが約束されているわけではありません。学ぼうと思えば本を読んだり、資料を調べて独学でも学べます。今できないことを、専門学校にいけばやるようになるとは思えません。正直、美術大学に通っている時点で恵まれていると思います。学んでいることは漫画にも応用が利くことですし、大学の図書館には役に立つ本もたくさんあるでしょう。与えられた環境を有為に使うか、無為と目を背けるかは自分次第です。それでも、大学の課題が邪魔になるなら、退学してバイトしながら専門学校に通うか、アシスタントに入って修業すればいいでしょう。親の要望に応えるため、あるいは漫画家になれなかった時の安全弁のために大学に行かざるを得ないのであれば、その環境の中で漫画を描くための時間を最大限作りましょう。ちなみに、周囲のアドバイスのように卒業して就職してから漫画を描こうというのは甘いです。就職すれば学生の今よりずっと時間を取ることが難しくなります。学生の今描けないものが、より忙しくなる社会人で描けるわけがありません。趣味で描くならともかく、プロを目指すなら学生のうちに少なくともデビューへの目処がついていなければならないと考えてください。