【質問と解答】

Q:1)女の子の絵について。私は今週刊少年誌に投稿しておりますが、女の子が可愛くないと担当さんから言われてしまいました。昔は少女漫画家志望で、周りから絵柄が可愛いと誉められることが多かったのですが、少女漫画的な可愛さと少年漫画的な可愛さは別物なのでしょうか。もっとも、現時点で私自身感覚がズレてしまっているのかもしれません。わりと可愛く描けたかな?と思えても周りからは可愛くないと言われたり、数年前の絵を私は全く可愛くないと感じても、親からはこっち(昔の作品)のほうが可愛いと言われてしまいました。また友人からは「あなたの絵は可愛いけど、ただそれだけ。萌えないし、性的な目では見られない。」とアドバイスを貰いましたが、難しいなぁと混乱してしまいます。女の子を描くのは好きで、むしろ男の子に苦手意識を持っていたのであまり女の子が苦手という感覚がありませんでした。しかし少年誌における女の子の可愛さがいかに重要かは理解していますし、早々に解決しなければならない問題だと思っています。可愛いと思った漫画家さんの絵を模写したりなどはしていますが、どうにも可愛くなりません。どうすればいいでしょうか。

  2)担当さんの意見はどの程度反映すればいいでしょうか。担当さんのお陰で賞も何度かいただき、ネームを直すごとに確実に良くなっているのも分かります。しかし完全に鵜呑みにしてしまうと自分のオリジナリティがなくなってしまう気がします。担当さん自身、思いつきで言ってるものもあるから全部鵜呑みにしないでくれとおっしゃっていましたが、そのあたりの線引きが難しいです。どこまで意見は取り入れれば良いでしょうか。

  3)私は初持ち込みの処女作で現在の担当さんに昨年からついていただき、現在4作目を制作していますが、どうやら最初の作品についてほとんど忘れてしまっているようです。一作目をある程度認めていただいたからこそ担当についてくださったのではと少し寂しいですが、毎日沢山の原稿を読んでいる編集さんはいちいち投稿者の漫画家など覚えていないものなのでしょうか。それとも単に私の実力不足でしょうか。




A:1)はっきりとは描いていませんが、文面からすると女性の方でしょうか。男性から見て可愛い女性キャラと、同性から見て可愛い女性キャラは明らかに異なります。このあたりは、あなたが男性視点を持って女性キャラを見られないと、乗り越えることが困難なハードルです。最初から男性的な視点を持っている女性漫画家やイラストレーター、アニメーターも大勢いますが、男女両方の視点での魅力を把握しているため、平均的な男性作家よりも人気があります。とはいえ、男性的な視点は男性作家の女性的な視点と同様に生来の感性ですから、なかなか持とうとして持てるものではありません。あなたがやれるとしたら、経験則で男性から見て可愛いと認識されるキャラパターンを身につけることです。具体的には可愛い絵柄の漫画家さんやイラストレーターの絵をトレース練習するのがいいかと思います。あなたも模写は試したようですが、やり方が間違っています。まず、トレース対象の漫画家やイラストレーターは男性に選んでもらうこと(担当が男性なら担当さんに)。そして、ただ漫然と模写するのではなく、どこが男性読者にアピールするポイントか考えながら分析しながら行うこと。顔だと輪郭、目・口・鼻のバランス、目の描き方、髪の毛の処理の仕方、表情のつけ方等。中でも目は重要ポイントで、目全体の形から、黒目の大きさ、黒目の中のタッチの入れ方あるいはトーン処理の仕方、ハイライトの大きさや位置、まつげのラインの描き方と処理の仕方等、いくつものポイントがあります。全身で言えば、腕のラインや手の描き方、太ももからふくらはぎ、足首へのラインには魂を込めてください。服のしわの入れ方も大事です。服の下の肉体を意識させるポイントです。また、ファッションや髪型にも男性と女性の嗜好の違いがあることも認識しておくといいでしょう。男性が女性に期待するおしゃれと女性が考えるオシャレとの間にはズレがあります。考えながらトレースを重ねることで、男性の感覚が理解できなくても経験則で「こういうのに男性読者が萌えるんだよね」というものがわかってくるでしょう。もしそれでも駄目なら、苦手なものを武器としない漫画、つまり女性キャラの可愛さが重要ではない作品内容を目指すという手もあります。

  2)担当編集の指導やアドバイスの内容を理解もせず、ただ表面的に言われるがままに直しているだけでは成長はありません。なぜそうしなければならないのか、どうしてそうするほうが効果的なのか、あなたが理解し納得するまで担当編集に食らいついてください。そうすることで初めてその指導やアドバイスが生きてきますし、応用もきくようになります。ただし、食らいついた結果、自分がやりたかったことと違う、自分が表現したいものじゃないとなったら、遠慮なくそれを主張し意見をぶつけることも必要です。担当編集もあなたの考えのすべてを把握しているわけではありません。互いに思い描いている作品の方向性がズレていることもあります。だからこそ相手とコミュニケートすることが大切です。そうすることで、担当編集もよりあなたに合った指導やアドバイスが可能になります。

  3)何をもって忘れていると言いたいのかわかりかねますが、最初の持ち込み時、あるいは新人賞初受賞時と2〜3年後とでは評価の違いがあるのは当然です。初めての時は将来性への期待も加味しての評価となりますが、それから担当がついて2〜3年後ともなると投稿段階であっても商業誌掲載の意識を持った作品作りを要求されます。要するに、当時としては十分な水準だったけれど、今はもっと高い水準を期待されているということではないでしょうか。