【質問と解答】

Q:プロの漫画家さんの実態を教えてください。少年誌、青年誌に絞った回答をお願いします。

1)単行本の初版部数の中央値は大体何部くらいですか?

2)重版がかかる作家は何人に一人くらいの割合ですか?

3)連載が終わってから次の連載が決まるまでどのように食いつないでいる人が多いですか?

4)連載が終わって次の連載が決まるまでの中央値はどれくらいですか?

5)原稿料の中央値は大体いくらくらいですか?




A:1)わかりません。新人と標準的なレギュラー連載作家、さらにそのごく一部のヒット作家とではそもそも部数設定条件がまったく異なるので、漫画単行本全体の初版部数の中央値を求めたところで、現場の編集者や個々の漫画家には参考にはならないからです。外部から見た興味本位な話題の提供にはなるでしょうが、それは週刊誌や漫画家研究家の範疇ですね。
 そういった前提の上で、推測の話でよければお答えします。まったくメディアミッスクのからまない新人作家から中堅作家のコミックス1巻の初版部数は1万〜1万5千(出版社や初出の掲載媒体によっては1万部未満の場合も多々ある)です。小説やゲーム、あるいはオリジナルアニメなど他分野でヒットしている作品のコミカライズであれば、雑誌連載時のアンケート結果によって2万から5万部スタートといったところです。ヒット実績のある作家であれば、新作タイトルであっても10〜20万部スタートもありますが、そういう作家は業界でもごく少数であり、刊行される全コミックスの大半は最初に述べた「初版1万〜1万5千」ラインです。それらのうち、重版がかからないものは巻を追うごとに部数が漸減していきます。2〜3巻で終了している作品の多くは、1巻の重版がかからず、2巻以降の初版部数は1巻の実売部数をもとに決まるためにそれ以下の数字になるというわけです。従って、中央値をとると、8000〜9000部というところではないかと推測します。これが平均値だと、巻数の長い大部数のヒット作が引き上げるので、ずっと高い数値になるのですが。

 2)「作家」というと、生涯に一度でも重版を経験したことがあればカウントされてしまうので、「作品」でお答えします。統計を取ったわけではありませんが、私自身の編集現場での実感で言うと5本のうち1本、つまり2割くらいでしょうか。WEB連載作品や単巻作品、短編集などの大半は重版がかからないので、業界全体で統計をとると実際の数値はもっと低いと思われます。

 3)ベテラン作家は貯金、新人だとアシスタントやその他のバイトです。

 4)これこそ意味のない数値です。仮に数値を算出したとしても、自分の次の連載が決まるまでの指標にはまったくならないからです。

 5)これも私的な推測の数値しか言えません。漫画家全体の構成を見ると、新人及びデビューから年数が経っていても固定した連載を持てない作家の割合が圧倒的なので、中央値をとるとデビュー時の原稿料に近い数値になります。1万円をやや下回るくらいではないでしょうか。