【質問と解答】

Q:デビューしていませんが、担当さんと打ち合わせして作品を創り小さな賞をとったのがきっかけで、漫画家を目指し始めました。今は担当さんに掲載用の企画(読み切り用と連載用)を出している段階です。日中は会社勤めをしており、夜に原稿に取り組んでいます。なるべく定時で帰宅して、持てる時間の全てを原稿に費やしていますが、日中の仕事さえなければ何倍も時間がとれるのにと焦りを感じることがあります。集中力はいい方なので、日曜など丸一日休みの日は、朝一で起きて深夜まで取り組むと企画が一本、そこそこの形にまとまることもあります。20代前半で独身の女性なので扶養家族を気にする必要はないのですが、「絶対安定の道をいきながらデビューを目指すべきだ」と両親からは強く言われており、頭では充分理解しているものの感情面では不服です。このままでは一つの企画が仕上がるにも一週間は最低かかりますし、下書き、ペン入れ、仕上げを含めるともっとかかります。他にデビューに向けて頑張っている人たちと比べると「自分は遅れをとっているのでは」と思わずにはいられません。つい先日も、半月かかって作った企画が掲載の会議で受からなかったため、なおさらもっと生産力を上げなければという焦りがあります。だからといって会社を辞めて企画を出せば良い物が描けるようになる保証はないのですが、モチベーション維持という意味でも、仕事・原稿・仕事・原稿の繰り返しで気持ちも分散してしまいます。現在勤めている会社も、就職難の時期に運よく採用されたからというだけで入社したもので、元々興味のない業界でした。当初は「入社したんだから精一杯働こう」と思っていたものの、漫画の方に真剣に取り組めば取り組むほど会社にいる時間が無駄に感じられてやるせなくなります。不誠実でお恥ずかしいのですが‥‥。休日も、朝から晩まで企画を考えているくらいなので、「何もしないで休息する」時間は実質ほぼありません。意識の上では元気なつもりなのですが(好きなことをやっているわけなので)、最近になって異常なほど体調を崩す頻度が増えました。企画が没になって描き直すことにもストレスは感じますが、直しているとダメ出しにも納得してきて、結果的には楽しんで原稿をつくることができているので、原稿描き直しのストレスが原因というわけではないと思っています。そこで、質問です。

1)一日長くても5〜6時間しか原稿に向かえない(この時間で生産できるのは下描き5枚前後)のは短すぎるのではないかと心配しているが、焦りすぎでしょうか?

2)生産力を上げたいのでいっそ仕事を辞めてしまいたいのですが、先のことを考えて現状のまま会社勤めを続けるべき、という考え方も理解していて、今一歩踏み出せないでいます。どうするべきだと思いますか?

3)仕事→原稿→仕事‥‥の繰り返しで、ほとんど体を休める時間が持てず、体調が不安定になっているので、仕事か原稿、どちらかに焦点を絞るべきと思うものの、二者択一だと心情的には「原稿」を優先的に考えてしまって、(2)の悩みに戻ってしまいます。




A:1)下絵の密度や作品舞台にもよりますが、5〜6時間で下描き5枚なら投稿者としては速いほうです。月刊連載しているプロの方でも、30Pの下絵に丸1週間以上かかる方もいますから。

2)あなたの作品を読んだことがなく漫画家としての力量がわからない以上、プロへの距離も判断できませんから、私にはアドバイスのしようがありません。アドバイスを求めるなら担当さんにすべきでしょう。仮に担当さんに漫画一本に絞ったらとアドバイスを貰ったとしても、最終的には自分で決めるべきことです。20歳過ぎているのですから、自分の人生には自分で責任を持って判断しましょう。会社を辞めて漫画一本に絞ってもプロとして食べていくことができず、将来の保証がない(会社員だからといって将来の保証があるわけではありませんが)バイトやパート生活をすることになるかもしれません。また、会社員を続けるという安全策をとったがためにプロになれず、ずっと悔やみ続けるかもしれません。ですが、いずれの場合も担当さんやご両親に責任を求めることはできません。彼らの意見にしてもアドバイスにしても、それ以上の強制力はなく、決断の権利と責任はあなた自身にあるからです。

3)前項と同じ回答です。