【質問と解答】

Q:初連載を終えて1年経つ新人漫画家です。「次の作品も是非うちで!」と担当さんは言ってくれるのですが、この一年間、まるでネームが通りません。担当さんは没になるたび色々と励ましてくれますし、「編集長も期待している」などと言ってくれるのですが、結局没になったネームはそのまま沈めることになります。貯金が目減りしてきて、そろそろ働き始めなければならないためアシスタント先を探しているのですが、アシスタントをやるよりは自分の作品を描きたいというのが正直なところで、「手元にやりたいネームもあるし、もしこれを掲載してくれる雑誌があるならそこで仕事をしたい」と思っています。つまり今の編集部との打ち合わせはそのまま行い、没になったネタを他誌で打ち合わせをするという形がとれないかと考えたわけです。しかし、担当さんにそれとなくそういう相談をしたところ、「出来ればうちで頑張って欲しい」と、賛成はされませんでした。そこで質問なのですが、「やはり仕事が欲しいし、お気に入りのネタなので他誌にも持ち込んでみます」と強引に他誌に行ってしまった場合、編集部との良好な関係は崩れますでしょうか? 色々と良くしてくれた編集部なので不義理なことはしたくないのですが、「是非うちで」「編集長も是非に」と言う割にはネームが通らないので、金銭的にもまずくなり、このまま何も行動を起こさなくてもいいものだろうかと焦っています。こういうケースでの編集部の裏事情などと併せ、ベターな行動を教えてください。




A:質問文を読むと、ネーム修正して再提出を求められたのではなく、ネーム全没ということですね? 担当編集との打ち合わせを重ねてのネームか、打ち合わせなしで提出したネームかによって事情は変わってきます。また、担当編集段階での没か、部内コンペもしくは編集長による没なのかによっても状況は異なります。今度質問をいただく際には、そのあたりの経緯も詳細に書いてください。
 編集長もネームに目を通していて、あなたに期待をかけているというのが本当なら、あなたにどんな作品を期待しているのか具体的な指示なり提案なりあるのが普通だと思います。ネームのどういうところを直せばいいのか、企画として没ならどこがよくなかったのか、雑誌としてどういう企画をあなたに望んでいるのか──そういった話があればあなたも次回作の目標が立てやすいでしょうし、連載までの距離がつかめるでしょう。そういった話がまったくないのであれば、前の連載直後では期待されていたものの、今ではそんな人もいたねというくらいの認識になっているかもしれません。いずれにせよ、企画を通すために何をどうすればいいのかわからないことが一番つらいと思います。単にネームのクオリティが低いというのなら他誌に持っていっても同じ結果でしょうが、雑誌のカラーに合わない、連載陣と企画がかぶる、編集長の好みに合わないといった理由でしたら他誌で企画が通る可能性はあります。現に、私が数ヵ月にわたって担当作家と打ち合わせた連載用ネームが編集長判断で没になったため、他誌に持ち込みを勧めたところ、そちらで採用されたことが何度かあります。ただ、黙って他誌に持ち込みをするのは、編集部との関係において一番まずいやり方です。担当編集に、今の自分の経済状態と心理状態を伝え、編集部内での自分の評価と位置づけと担当編集として考えている再連載へのビジョンを聞いた上で、他誌への持ち込みを含めた今後の対応を話し合ってください。担当さんもあなたに対して経済的保証ができない以上、明確な連載へのビジョンなしに他誌への持ち込みを一方的に止める権利はないはずです。