【質問と解答】

Q:4/7にPCにつきまして質問させていただいた者です。大変詳細に分かりやすく記載していただき本当にありがとうございました。地方の田舎のため周りに漫画家を目指している人がおらず、またPCに疎くて調べ方もわからなかったため、質問させていただきました。今日たまたま地元のショップで店員さんと話してきたので、もしよければ追加質問させてください。

 将来はデジタルでも制作をと考えていますが、今のところは自分の作品を一番表現できるのはアナログなので、現時点のパソコンの用途としては(重複しますが)テーブルの前に置いて、映画やDVD、音楽を視聴したり、背景資料検索等がスムーズにできれば十分です。そして、アナログでの漫画制作の合間に、少しずつでもイラスト描きや、トーンだけでもPCで覚えといてもいいかなとか考えたりしています。
 前回、ネット上でもっとショップについての評判を集めた上で判断してくださいとのご回答を頂いたのですが、私なりに調べていくうちに某質問投稿サイトのベストアンサーに行き当たって、メモリは8GBでなく16GBないとスムーズにならないのかとかかえってわからなくなりました。そこで、地元のPCショップに行ったら、店員さんに店頭に並べられていたNECの機種を薦められ、TV放送や映像を見るならTVはTVで別に買って、PC専門にした方がスムーズと言われました。だったら、TV視聴機能はなくて、ドライブもブルーレイじゃなく普通のDVDドライブでいいのかなと、また迷ってしまいました。そして、悩んでいたメモリについて聞くと、8GBで大丈夫と言われたのですが、本当に大丈夫なのでしょうか? また、SSDとHDDの違いについても聞いたところ、パソコンはHDDでもSSDでも壊れる壊れない関係なしに4、5年も経てば遅くなるものだから結局買い替えることになるから同じと言われました。結局のところ、私がショップで薦められた機種でいいのでしょうか? パソコン予算は大体15万前後(できれば以下)を考えています。
 イラストのソフトやタブレットにつきましても全く知識がなく、ブログ等で推奨されているのを見た「イラスタMini&コミスタMini付属 Wacom BAMBOOコミック CTH-670/K2」でいいのかなと思っています。2012年春にコミスタとイラスタが組み合わさったソフトが出るらしいですが、これで大丈夫でしょうか?




A:前回の質問では買い替えとのことでしたので、初心者レベルは脱しているものとして回答しましたが、今回は初心者ということを前提に改めて回答させていただきます。

 まず、パソコンは大別してメーカー既製のパソコンとBOTパソコンに分けることができます。メーカー既製品は最初から仕様が決まっているもので、TVでCMを流したりして家電ショップなどで売られているものがそうです。BTOパソコンの「BTO」は「Build to Order」(受注生産、注文製造)の略で、ユーザーの注文によって様々なカスタマイズが可能なパソコンです。注文に応じて製造するといっても、ユーザーが全パーツをゼロからセレクトするのはメーカー(ショップ)とユーザー双方にとって大変なので、既製品のように価格帯や用途に応じて様々なラインナップを用意し、まずモデルを選んでそこからパーツを交換したり増設したりのカスタマイズをするようになっています(一部の専門店ではフルオーダーも可能ですが、知識が必須なので上級者向けです)。今回、あなたがPCショップの店員さんから薦められたNECの製品はメーカー既製品で、4/7の質問であなたが挙げたのは2機種ともBTOパソコンに当たります。BTOは直販が基本で、店舗を持たない通販専門のところも多いです。BTO大手のメーカー系にはDELL(デルコンピュータ)、HPDirectplus、エプソンダイレクトなど、ショップ系ではドスパラ、TWO TOP、Faith、パソコン工房、サイコムなどがあります。各ショップの評判は、BOTショップの評価サイトや口コミサイトで調べてください。「BOTパソコン」で検索をかければたくさん出てきます。BTOパソコンのメリットとしては、用途や予算に応じたカスタマイズが可能、同スペックなら既製品より比較的安価、最新パーツをいち早く導入可能という点が挙げられます。逆にデメリットは、基本モデルの更新が頻繁な上にオーダーに応じてカスタマイズするので必然的に説明書がおおざっぱなものしかなく、初心者にはわかりにくいという点でしょう。一口に言えば、メーカー既製品は初心者でも入りやすい、広く浅くの一般用途向けの家電的なパソコン、BTOパソコンは中・上級者からのマニアor専門用途向けというところでしょうか。
 漫画・イラスト制作を本格的にやるならBTOで用途に絞った高スペックパソコンを求めるべきですが、質問内容を読むと今のあなたにはそこまでの高スペックは必要ないと思います。初心者に優しい既製品でそこそこのスペックの、モニタ込み(一体型含む)8〜10万くらいの価格帯でBD読み書き対応ドライブがあるものを探すのがいいでしょう。予算が厳しければ、スペックは落ちるものの、型落ちのモデルを安く購入するのも手です。ある程度の知識があるなら、前回の回答のようにCPUとケース、電源周りに余裕を持たせておいて、少しずつ自分でメモリやHDDを増設したりグラフィックボードを換装したりしてスペックをあげていく手もお勧めできるのですが(知識が必要と言いましたが、最新のケースはドライバー不要のものも多くなり作業自体はごく簡単なものです)。最低限使いたいアプリが動くことを条件にBOTでモニタ込み5〜6万クラスで組んで、使い慣れた2〜3年後に今のスペックに物足りなくなってから高スペックのパソコンに買い替えるのもいいです。まあ、最新パソコンの5〜6万クラスなら5年前の12〜13万クラスに匹敵するかそれ以上と考えていいですし、初心者の使用には十分事足りるはずです。ただ、前述したように説明書があてになりませんので、近くに相談できる人がいない場合は多少高くなりますが既製品を買ったほうが無難です。ショップの店員さんの言うようにパソコンは進化のスピードが速いので、使いこなせないのに無理して高スペックを求めて高いお金を出すのは馬鹿馬鹿しいです。
 映像視聴に関してはテレビと専用レコーダーのほうがいいに決まっていますが、自分の部屋に置くスペースがなければパソコンと共用にしたほうが使い勝手がいいです。作業の合間にテレビ番組や映像ソフトをちょい見したり、映像資料を編集・切り出ししてデータベース化とか考えているなら、地デジチューナーやBDドライブは欲しいところです。そのあたりは自分の生活環境や目的に応じて決めてください。メモリに関しては予算に余裕があれば積めるだけ積みたいですが、複数のアプリを同時立ち上げして作業ということをしなければ4GBでも十分使えます。本格的にデジタル制作に移行するのでなければ、8GBあれば余裕でしょう。SSDはHDDよりも読み書き速度が速いのがメリットです。故障率が低く寿命が長いともされていますが、それは理論上であり故障の可能性がないわけでも寿命がないわけでもありませんし、フラッシュメモリならではのデメリットもあります。出始めよりも価格が下がってきたとはいえまだまだ贅沢品なので、現時点ではその予算があれば他に回すことをお勧めします。メーカー既製品に関しては、「価格.com」「coneco.net」「ベストゲート」等の価格比較サイトでスペック検索をかけて自分の希望のスペックと予算に合った製品を探すといいでしょう。BTOパソコンに関しては、ネットでの評判・評価でまずショップを決めて、その中で自分の予算に合ったラインナップをベースに組むようにするといいです。
 また、前回の質問ではイラスト用のソフトとタブレットをお持ちかどうかはっきりしなかったのですが、今回の質問ではっきりしたので、改めてお答えします。前回質問時の予算10万から15万にアップした差額分をそのままソフトとタブレットに充てるものと考えます。そこでまず、あなた自身がデジタルでのイラストや漫画制作をどの程度真剣に考えているのか、という点が重要になります。パソコンを新調するついでにちょっとデジタル制作にも興味があるので触ってみたいということでしたら、あなたが質問の中で挙げた製品が価格的にも手頃で、安くついたぶんパソコンのほうにお金をかけるといいでしょう。ただし、デジタル制作の勉強をしてアナログ原稿を加工したりデジタルトーンを使ったり、カラーイラストをデジタルで描いたり、将来はデジタル制作に移行することも念頭において真剣に取り組もうと考えているのでしたら、その製品にバンドルされているソフトでは物足りません。イラスタminiとコミスタminiは、それぞれIllustStudioとComicStudioの試供版的な位置づけで、印刷や他のアプリとのデータ互換の制限などかなり機能が限定されています。コミスタでしたらプロも使っている「ComicStudio 4.0Pro」をお薦めします。実売価格はネットショップで1万6千円弱(2012年5月初頭現在)です。ComicStudio 4.0Proのユーザは、IllustStudioとComicStudioの機能を統合して進化させた後継ソフトである「CLIP STUDIO PAINT EX」(2012年秋発売予定)を無償ダウンロードできるとのことです。また、それに先駆けて2012年5月31日に発売予定の「CLIP STUDIO PAINT PRO」(EXの下位ソフトで漫画制作機能はない。IllustStudioの後継ソフトと考えられる)もEX発売まで無償利用できるそうです。
 そして、タブレットでお薦めするのは、wacomのBAMBOOシリーズの上位シリーズのIntuosシリーズの「Intuos5 touch medium PTH-650/K1」です。デジタルイラスト制作の定番ソフトである「Adobe Photoshop Elements 10」「Corel Painter Essentials 4」「Corel Painter Sketch Pad」をバンドルして、ソフトなしのモデル(PTH-650/K0)と実売価格で400円ほどしか変わらず(2012年5月初頭現在)、お買い得です。タブレットは実際に絵を描く道具ですので、本格的な使用を想定しているならそこはケチらずやはり良いものを揃えたほうがいいです。なお、Intuos5の前のモデルのIntuos4にはComicStudioPro 4.0とIllustStudioをバンドルした「Intuos4 Comic Edition PTK-640/K5」という製品があり、旧機種とはいえデジタル漫画制作を志す人にとってはかなりお買い得なのですが、在庫はほとんどないと思います。もし見つけて購入する際は、CLIP STUDIO PAINT EXへの無償アップグレード対象になっているかどうか確認してからにしてください。

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