【質問と解答】

Q:約2年前、某少年誌で佳作一歩手前の賞を受賞しました。その後、アシスタント(事情あって数か月だけですが)をしたり、漫画と関係のない仕事をしながら、デビュー目指して担当さんと二人三脚で新作を作ってきました。漫画家を目指したのも20代後半に入ってからで、初受賞時は28歳ぎりぎり手前でした。年齢的にも20代のうちにデビューして読み切りまでは載せたいと思い、その後3作新人賞に出したのですが、毎回佳作一歩前の賞にはいくのですが、佳作に届きませんでした。
 私の担当さんは新人を一人も連載まで漕ぎ着けさせたことがないらしく、たまたま同じ担当でアシスタント先の先輩だった方から、「あの人は漫画家を育てる能力はあまりないから、自力でどうにかしないとデビューできないよ」と助言をいただいてました。正直、私もこの担当さんに頼りなさを感じていた上、その少年誌は新人の下積みが長く、なかなか上に上がれないという体制で(勿論、ベテランを蹴落とすほどの作品をかけない自分の実力不足もありますが)何度かほかの雑誌にいこうかと悩みました。それでも、頼りないながらこの担当さんが目指している路線が私が描きたいものと同じゴールにあったこと、何より情に厚い方で、「この担当出身の最初の連載漫画家になって担当さんともども名誉挽回してやる!」と意気込んでました。ところが、半年ほど前、急きょ担当さんの異動が決まり、新しい担当さんになりました。
 前担当とは真逆のタイプで、若くて熱くやる気満々、というタイプの方でした。担当替えの時点ですでに前担当と創り上げた4作目があったので、初顔合わせでその作品を見てもらったところ、すごく厳しい批判をされ、「これじゃ今回もデビュー無理ですよ」と言われ、やはりまたもや佳作に届かずの結果でした。
 新担当に今までの作品をみてもらい、現状を打破するために厳しいアドバイスをもらおうと思ったのですが、批判だけしてアドバイスが抽象的というか、いまいちわからなかったんです。
 私も実力不足ながらも、一応は何度か賞をとって打ち合わせも経験していますし、担当さんにゼロから教えてもらえないと描けないほどレベルが低いとは思っていません。厳しい批判をいただくこともむしろありがたいと思っています。ただ、なんというか、この新担当は一人熱くなって半切れ状態で私の作品をメッタ切りする感じで、一緒に漫画を作り上げていくタイプではなく、新人作家を見下しているのかな、と感じてしまいました。見た感じ若そうな方だし、若い編集者だから熱さもあるし、こんなもんなのかな、と初打ち合わせは終わりました。
 前担当は30代半ばの中堅という感じの方で、きちんと新作のネームの持ち込み時に、前回の応募作の原稿を返却してくれて、ちゃんと審査の批評も教えてくれたのですが、新担当は新作の賞にもれた原稿も返してくれず、知らないうちに自宅に送られていたので電話したところ、「自分は知らないけれど、誰かが送ったんじゃないですか?」みたいなことを言われ、審査の結果についても詳しく話してくれず、やはり抽象的な言葉しか聞けませんでした。抽象的というのは、「先が読めたからダメだった」とか本当に一言二言しかいってくれないという感じなのです。
 その後、新作ネームをFAXするよう言われて送ったにもかかわらず、1週間待っても返事が来なかったので、こちらから電話したところ、また具体的なアドバイスはなく、一方的に相手が熱くなって怒鳴って電話を切られる、という感じでした。そして2回目のネームを送った後、「あなたからはやる気が微塵も感じられないので担当を下ります。この雑誌でやりたかったら再度投稿から始めて、ほかの編集者と出会ってください」と言われました。
 賞をとったらこの雑誌では新人作家扱いだと聞いていたので、新しい担当を紹介してはいただけないかと頼みましたが、「しません」ときっぱり言われました。
 結果的に、この雑誌との縁が切れることとなり、ストレスで体調を壊したこともあり、この半年漫画から離れていました。年齢は30歳になってしまいましたが、体調も回復してきて、年齢のハンデを超えて再起しよう!と誓い、投稿か持ち込みから出直す覚悟を決めたのですが、担当編集者というのは本来はこういう人たちなのでしょうか。私の前担当が甘すぎただけなのでしょうか。よく「出会う担当次第でプロになれるか決まる。自分の実力じゃどうにもならない、編集部の黒い部分もある」とアシスタント先の先生や先輩が言っていたことも思い出し、再度この雑誌に投稿するか、それともほかの雑誌に行くか、もしくは年齢的に少年誌から青年誌にシフトすべきか、今後の路線について迷っています。年齢的に厳しくてもやはり少年誌で描いていきたいですし、こう言ってる間にもガンガン描いて手当たり次第投稿か持ち込みすべきだもと思っています。ただ、今後いろんな出版社にいって、もし何人かの編集者が目にかけてくださった場合、どの方についていくべきか全くわからなくなってしまいました。
 質問がうまくまとめられず申し訳ないのですが、新担当との数か月のやりとりや、先輩たちの言葉を聞いて(編集者に対してだけですが)、人間不信に陥りかけています。




A:担当の巡り合わせが悪いとしかいいようがありませんね。新人賞受賞時にはその作品を最も高く評価した編集部員が担当になるのですが、新担当の方は前担当が異動時に機械的に担当新人を割り振られただけで、元々あなたの作品が好きでも何でもなかったのでしょう。必ずしも駄目な編集者とは限らず、彼が目をかけている新人作家にとっては面倒見のいい編集者という可能性もあります。経緯を拝見すると、新担当の方は最初からあなたには見切りを付けていたのかもしれません。前担当の方の異動先が少年漫画の編集部ならそちらを頼る手もありますが、そうでないなら他の雑誌か出版社に投稿からやり直したほうがいいです。
 やり直す場合の投稿先ですが、30歳を超えると少なくとも週刊の少年誌の新人賞は絶望的です。絵柄が合えば、ファンタジーや萌え系の少年誌でギリギリでしょうか。絵柄がそちら向けでないなら、青年誌に投稿先をシフトするしかないでしょうね。持ち込みが可能ならば、まずはいくつかの編集部に持ち込みをして肌で感触を確認してから投稿することをお勧めします。
 漫画家同士で編集者の話をすると悪い話のほうが話題として盛り上がるので、そればかりが目立つため不安になるでしょうが、本当にひどい編集者は一握りで(困ったことにいることはいます)、上手くいっていない場合でも大抵は相性だったり誤解だったりするものです。とはいえ、投稿して新しく担当がついたら今度こそその編集者の熱意や指導力を品定めする必要があります。投稿し直して新担当がついたら、最初のネームのやり取りである程度見極めがつけられます。今までの担当とのやり取りでよくわかっているでしょうが、ネームを送っても放置もしくは返事が遅い、アドバイスに具体性がない、というのは赤信号です。年齢的に後がありませんから、我慢しないで担当替えを申し出るか、早めに見切りを付けて再度投稿し直しましょう。

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