【質問と解答】

Q:数年前に、ある雑誌で一番下の賞ながら受賞させていただき、担当も付きました。その後、担当さんから読んでみたいと言われ、投稿した作品の続編の読み切りネームを送ったところ、気に入っていただけたのですが、高い賞を受賞していないので、まずは新人漫画家に用意された読み切り枠用に新しく話を描くことになりました。当時、大学に入りたての上にバイトを週5日していたのですが、お話をいただけたのが嬉しかったことと、早く漫画家になりたいという焦りから、引き受けました。しかし、とんとん拍子に進む話に自分の実力があまりに伴っていないことに、その時は気づいていなかったのです。徹夜を何日も繰り返して仕上げはしたものの、冷静な頭なら誰が見ても雑誌に掲載出来るような仕上がりではありませんでした。それなのに、雑誌のほうは別の原稿に差し替える時間もなくそのまま掲載に至ってしまったのです。その後、担当さんからも、「社内の評判がかなり悪かった。」と伺いました。それでも、ペンネームを変えて描いていきましょうと言っていただけたのですが、それが完全にトラウマになってしまい、なんとかいい作品を仕上げなくてはと焦りはするものの、考えるストーリー全てに納得がいかず、2年間絵は描き続けていたものの漫画作品を完成させることができませんでした。いつメールを送っても返信を下さる担当さんに申し訳なく、新しくフリーでの投稿から始めますとお話をして終わりました。
 それから気持ちを切り替えられ、それまでのことも一つの経験として受け止め、再び漫画を描けるようになりました。別れ際に担当さんからいただいた「弊社であろうと他社であろうと投稿がんばってください」というお言葉は社交辞令なのだろうと思いつつも、その雑誌での掲載をあきらめたくなくて、改めて新人賞に投稿したのです。しかし、トラウマから解放されて初めて送った作品は箸にも棒にもかかりませんでした。まだまだ実力が足りなかったのかと思いつつも、自信がまったく無かったわけではないので、少々勘ぐり過ぎかもしれませんが、以前の不祥事のために作品が良いものだったとしても受賞させないのだろうかと考えてしまいます。そのような理由で、落選することはありますでしょうか?




A:考え過ぎですね。あなたは「不祥事」という言い方をしていますが、単に編集部(というより担当さんでしょうか)が当時のあなたを過大評価しすぎたというだけであって、あなたのせいではありませんし別に不祥事でもありません。経験の少ない新人にぎりぎりの進行をさせて代原も用意していなかった編集部の不首尾ではありますが、小さい雑誌ではよくあることです。その後いい作品を上げられれば再チャレンジのチャンスはあったと思います。ですから、再応募した新人賞で落選したのは、評判の悪かったという読み切り作品への報復措置などではありません。それよりも2年のブランクと、その成果としての新作評価が見合っていなかったというのが今回の審査結果になったと考えていいでしょう。
 商業誌の新人漫画賞というのは、作品評価自体を目的としているのではなく雑誌の将来を担う新人発掘を目的としています。最初の受賞時は「将来性」という期待値も加味しての評価ですが、二度目、三度目となると審査のハードルは高くなるのです。例えば初投稿作が奨励賞だったら、第2作が同レベルの出来であっても同じ奨励賞は獲れないと考えてください。つまり、成長がないと判断されるわけです。あなたの場合、その雑誌で最後に獲ったのは一番下の賞でしたね。今回の新作は客観的にみてもそれより質が高い作品だったとしましょう。前回の受賞直後なら最低でも同じ賞に入ってもいいかもしれません。しかし、ここで考えなくてはならないのは受賞から2年以上経過していることです。その時間経過の分編集部のハードル(期待値)も高くなっていると考えなければなりません。つまり、年数に見合った成長が求められるということです。まして問題の読み切り作品からも2年新作を完成させられなかった、イコール生産力がない、もしくは精神力が弱いというマイナス補正がかかっているわけです。あなたが受賞するためにはそれを覆すだけの力を見せつける必要がありますが、2年間のブランクに対する編集部の不安を払拭することは難しいでしょう。評価の色のついていない他誌で一から出直すほうが早道だと思います。

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