【質問と解答】

Q:今年の8月で29歳になります。先日、某誌に投稿した百ページの漫画が評価シート付きで返却されてきました。今まで一回も賞に引っ掛かったことがないので、自分の漫画の批評を見るのは初めてでした。その評価シートを見たら、ズラーッと評価項目がたくさん並んでいるのですが、すべての項目が「下手」などの悪いほうにチェックがつけられていました。良いほうにチェックがつけられているのは一つもありませんでした。愕然としました。
 私は実は東京などのいくつかの文芸同人誌に小説を発表していて、そっちのほうは皆さんが私の文学の才能を認めてくださった上でアドバイスなどしてくれます。
 文学と漫画との評価の雲泥の差を思い知り、漫画の評価シートが心に突き刺さり、正直「もう29歳になるし、これだけボロクソに否定されたのだから、今から漫画を評価されるレベルにまで引き上げる努力をしても無駄かも知れない」と思い、文学に専念しようかなどと考えました。姉なども心配して、「君には文学のほうが向いていると思う」と言っています。それでも、本当のところは未だに漫画に未練があって、有名漫画家のコミックスなどを開くたびに、「この世界に入れたらなあ」と思ってしまいます。しかし、まだ高校生とか大学生ならともかく、29歳目前で「おまえの漫画なんかゴミだ」と言わんばかりの評価シートを見たことで、すごく迷っています。




A:漫画に限らずひとつの道を追い求めて行く上で、多くの人が直面する壁が「才能と年齢」です。
 才能は誰もが平等に与えられているものではありませんが、少なくとも漫画の場合はその差を努力である程度は埋められます。ただし、絵や話作りのセンスに恵まれた人の何倍も何十倍も努力することが前提ですので、年齢がその差を埋める時間を与えてくれなくなるということです。
 あなたの場合、何年投稿活動をしてきたのかわかりませんが、20歳頃から始めたとすれば29になって初めて自分の漫画力に対する評価を知って動揺したというのはいかにも遅すぎです。それまで何回か投稿して一度も賞に引っかからないということで、力の足りなさを薄々は感じていたのではないですか? それならば、無理をしてでも持ち込みをして作品の批評を受けて自分の現時点の力を知った上で正しい努力をしてくるべきでした。
 漫画家は30歳を境にデビューへの道が狭くなりますし、その年になれば嫌でもこれからの人生設計を考えざるをえません。ですから、漫画を諦めるのも選択としては正しいです。一方で、あくまで漫画家を目指す気概を持ち続けるならば、エールを送りましょう。40歳、50歳じゃないのですから、可能性はまだまだあります。ただし、投稿先は青年誌がいいでしょう。少年誌よりも受け入れられる絵柄や表現の幅が広いですし、新人賞の評価も絵よりも内容重視の傾向があり、文芸誌である程度の評価を得ているあなたに向いていると思われます。
 まずは、今の自分の力を把握するために色々な編集部に持ち込みをしてみましょう。編集部によって求めるものが異なりますので、作品の評価も変わりますから。そして、少しでもあなたの長所を見出してくれる編集部が見つかったら、そこでより評価されるよう自分を磨いて食らいついていってください。


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