【質問と解答】

Q:現在二十八歳です。十八歳の時に漫画家志望で上京しましたが、精神疾患に罹るなどしたため、技術もレベルアップできず、わずかな回数しか投稿できずに家庭の事情で二十五歳で田舎に帰って来ました。田舎へ帰ってから、短編だけでなく100ページ近い大作も投稿しました。しかしボツでした。
そんなわけで画力やネームのレベルを上げるべく、プロの作品を研究して漫画の勉強をやり直そうと思っているのですが、二十八歳でそんなことをしてももう伸び代はないでしょうか。年齢と田舎在住というハンデを考えると、自分でも気持ちが萎えそうになります。
親や元看護師の伯母さんなどに相談すると、好きなことを諦めるのは、精神疾患のためにも良くない、かえって精神に破綻をきたすから続けなさいと言ってくれます。情熱はまだまだあるのです。ただ、漫画家を目指す私のこういった状況が、客観的に見てどうなのかと思ったりもします。レベルアップして続けるべきか、現実に負けてやめるべきなのかと悩んでいます。どう考えたらよいでしょうか。




A:あなたの精神疾患がどのような症状でどの程度のものかわかりませんが、担当編集者との一対一の対面打ち合わせや電話打ち合わせが可能でしたら、プロを目指すのに障害はありません。あとは技術を磨いて投稿することに専念してください。
そして、投稿の際には自分の境遇を書いた手紙などを同封しないこと。投稿作品を開封しているとたまにあるのですが、病気や家庭の事情で技術が拙い云々と、手紙を添えたり原稿裏に書いてきたりする方がいます。しかし、個人の事情を考慮して評価が上乗せされることはありませんし、かえって面倒臭そうな投稿者だなという印象を与えてしまいます。原稿と必要事項だけを書いて送り、純粋に作品のみの評価をしてもらうようにしましょう。そして、担当編集者がついた時に初めて自分の境遇を打ち明け、精神疾患に負担の少ない打ち合わせ方法やペース配分について相談してください。
一方、担当編集者との打ち合わせができない、精神に多大の負担を強いられるというレベルであれば、商業誌の漫画家はあきらめたほうがいいです。私が昔担当した方にも極度のうつを患った作家さんがいて、顔を合わせるどころか電話での話もできなくなり、かろうじてメールでやりとりしていたものの返事も来たりこなかったりで、そのうち関係が自然消滅していきました。やはり、原稿があげられるのかすらわからない状態ではプロとしてはやっていくことはできません。
ただ、漫画が好きであれば、それを諦める必要はありません。今は、商業漫画誌でなくとも個人で作品を発表していく手段がたくさんあります。ブログや漫画・動画の投稿サイト、本の形にしたければお金はかかりますが同人誌や個人出版という形もあります(ただ、評価コメントが書き込めるようになっている投稿サイトは避けてください。批評ではなく、作者を傷つけることだけを目的とした悪意あるコメントを書き込む人間もいますので、病気に障ります)。ネットや同人誌でコツコツと描いて発表する中で話題になれば、出版社に声を掛けられて商業出版という可能性もあります。漫画を描くことが今のあなたの精神の支えになっているならば、親御さんや伯母さんも勧めてくださっているのですから独りでも描き続けていってはいかがでしょうか。


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