【質問と解答】

Q:ハウツー本や、掲示板、こちらの相談室で知った情報で疑問に思ったことがあったので質問させて頂きます。

1)原稿の仕上げについて
a)生原稿を見せてもらったという人の体験を見ると誰もが「綺麗でびっくりした」と言っていました。なので、綺麗さを常に意識し作画している途中なのですが、生原稿を見たことがないので、とりあえず「紙を彫り過ぎない、汚れ、折れ、線の抜き、ベタ、はみ出し」が今気をつけていることです。他に気をつけるべき重要なポイントがあればご助言下さい。

b)ペンでのコマ割の時に線がずれない様、しっかり定規をあてて線を引いています。この時メモリ線にペンのドット跡があります。これは汚く思われますか?

c)ベタのムラの基準
ベタをするときに、細かいところはインクやミリペン、マジックで。大きなところは筆ペンで塗るなどして使い分けています、その為どうしてもベタの質感に違いが生じます。これはムラと判断されるのでしょうか? 黒ければ、ツールは何でもいいとハウツー本には描いていますが、自分で判断できません。

d)タチキリ線について
あるハウツー本にはタチキリ線の外側まで描いても断ち切られるので絵を描いても意味はないので、タチキリより少しはみ出る程度でいいと書いてました。しかしアイシー原稿用紙使用方法にはタチキリよりさらに外側のメモリ線いっぱいまで絵を描くようにと描いてました。編集さんから見れば目盛り線いっぱいまで描いているほうが好印象なのでしょうか? それとも、そんなことは気にしてないのでしょうか?

2)背景を描くツールについて
背景を描く際、ミリペンを使うことがあります。人物はGペンがいいけど背景ならミリペンでもOKといっていた人がいたのですが、編集さんから見て背景といえど、ミリペンは好まれませんか?

3)表現について
私はスクウェア・エニックスさんの少年漫画家を目指しているのですが、性的表現、暴力表現などの基準はどこまで許されるのか悩んでいます。サイコ、シリアス、ホラー系だと、今後その様な台詞、絵を使用することがあると思います。映画『ソウ』の様な直接的グロとまではいきませんが、猟奇的シーンでも黒シルエット処理などすれば許されるかな‥と自分では考えてますが、現状はどうなのでしょうか? ホラー、サイコ系は短編としてまとめやすいので作りやすいのですが‥‥。特に新人賞では、できるだけ避けるべきジャンルでしょうか?

4)話の構成術について
今まで読んだハウツー本には、たいてい起承転結を紹介していました。その中の一冊には序破急の方法も紹介してました。そして『10年メシが食える漫画家 入門』という本には起承転結の起を省いた、「承転結」でもかまわないと紹介してました。しかし、5年前のコミッカーズの原稿添削で「基本の起承転結ができていな い、これでは承転結だ」といった指摘を受けている内容がありました。これを知って、話の作り方には色んな方法があるけれど新人賞の編 集側の受けを狙うなら、起承転結を選ぶのが無難ということでしょうか?すこしでも編集者の方の目に止まってほしいので気をつけることをたくさん知りたいです。



A:1)
 a)原稿の状態についてはあまり神経質にならなくて結構です。線のはみ出し等は原稿の仕上げの問題ですから当然のこととして、あとは飲食物の汚 れや煙草の焦げ痕など、常識的な注意をしていれば十分です。

 b)気にしなくて結構です。

 c)画材によるスミベタの質感の違いは気にする必要はありません。

 d)タチキリ線は、印刷して製本する際に裁断する時の目安の線です。たくさんの紙をまとめて裁断するので、多少誤差が生じます。印刷においては、その誤 差をタチキリ線の内側と外側それぞれ3ミリと想定しています。ですから、タチキリ線の外側3ミリまで描くようにしてください。それ以上描くと断ち切られる絵の面積が多くなって、原稿と雑誌とではコマの構図の印象が変わってきてしまいます。

 2)背景のように強弱のタッチをつけない線で描きたい対象ならば、ミリペンを使ってもかまいません。ただし、褪色しないインクを使用しているものを選びましょう。

 3)表現については出版社や編集部によって考え方が異なりますので一概に語ることはできませんが、あなたは表現についての意識が敏感なようですし、直接的な猟奇・グロ表現・性行為描写を避ければ大丈夫でしょう。ただ、ホラー、サイコ系作品で投稿すると、受賞後も同系統の作品を求められますので、そういう色がついてしまうことを恐れるならば、短編としてまとめやすいという理由でジャンルを選ばないほうがいいです。

 4)『10年メシが食える漫画家入門』では三幕構成を推奨していましたが、「『起承転結』の起を省いた、『承転結』でもかまわない」とは書いていなかったかと思います。「起承転結」のような4段型構成も「三幕構成」や「序破急」のような3段型構成も、読者にストーリーを面白く読ませるための技術にすぎません。別に法則を守ることが大事なのではなく、面白ければどんな構成だって構わないのです。ただ、それらの構成術が数百年、数千年受け継がれて きたのはそれだけ優れた技法であるからです。
構成術に関しては2008年5月1日の質問の回答を参考にしてください。


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