【質問と解答】

Q:新人でデビューした方(友人)について、とても理解に苦しむ事があります。漫画は模写からはじまる・・という事は知っていますし、練習方法に模写をして「掴む」という方法もあるとは思うのですが、編集、友人から見ても既存作家に似ている事を指摘されながらも、今でも、下絵等しながら、漫画を隣において描いていく・・・絵柄変更の為、変えたい絵柄をコピーしてきて模写して、自分のものとする・・・というやり方は著作権侵害・・とまでは言いがたいですが、危険な行為にはなりませんか?(本人は落書き程度と言いますが、結局見るとその模写元の絵の特徴になってしまってます) 本人が既存作家に似ている事を自覚しておらず、友人、編集から見ると既存作家に大変特徴が似ている・・と思うのですが、デビューできた以上、それは「編集が黙殺した、認めた」という事で、これからもその模写したものを(勿論構図等までは模写していないと思いますが)描いて行っても良いのでしょうか? 疑問を伝えると、「今までそうしてきたし、似ている作家は沢山いるし、こうしないと描けないし」と普通に流されてしまいます。原稿料が発生している以上絵はなるべくオリジナリティを・・・と思うのですが、これは私の考えが固い、もしくはデビューした友人に対してのひがみなのか・・・。友人以外にも特に同人誌ジャンプ系パロの女性向けの出身者の方はパロ元の作家さんに傾向が似ていますが、これは著作権侵害とかそういのには引っかからないのでしょうか? それともそのパロディのファンを取り込める・・・という編集の思惑があるのか な・・・?とも思えるのですが、その危険な行為をしなくちゃいけないほど、雑誌等は売り上げが下がっているのでしょうか? 漫画家を目指す以上、個性や感性だけは人と違うもの・・と思いがあるので、この「新人」の行為がとても疑問に思います。

A:あからさまなキャラクターのコピーや構図の模写でもない限り、絵柄を似せる、テクニックを盗むという行為自体は著作権侵害にはなりません。あなたのご友人の新人作家がどの程度既成作家に絵柄を似せているのかわかりませんが、好きな作家の影響が絵柄や作風に出るのはごく普通のことです。十代や二十代前半でデビューする漫画業界では、既成作家の影響がまったくないほうが珍しいと言っていいでしょう。もちろん、オリジナリティが大切なのは当然で、ファンジン系同人誌(いわゆる漫画・アニパロと呼ばれるもの)ではもてはやされるコピー画風もプロ(商業漫画家)としてはマイナスに働きます。元画風の作家の亜流という位置づけから逃れならないままだと、いずれ読者からは飽きられ消えていくでしょう。それは、自分自身のオリジナリティを磨くことを怠った自業自得といえます。ご友人がデビューできたのは、絵柄がコピーであるにしろ作風かキャラやストーリー設定かネームセンスか…いずれかにオリジナリティや光るところが認められたからだと思いますが、「自分自身の漫画」をちゃんと描いていれば絵柄についても描いているうちにいずれ自分自身の持ち味が出てくるはずです。そういう意味では、デビュー後も原稿の下絵をしながら既成作家の絵を隣に置いて手本にしているのは、あなたの言うように感心しません。それではいつまで経っても自分の絵にならないからです。もっとも、早急に絵柄変更をしなければならないという理由があるのなら、既成作家の絵を一時的に模写するのはやむをえない行為かもしれません。自分が今まで築いてきた絵柄を一度壊して新たな絵柄を作り上げるのは容易なことではなく、指標となる絵柄がないと先に進めないのです。読者に受けるオリジナルの絵柄が簡単にゼロから生み出せるようなら、初めから絵柄変更をしなければならないようになる羽目にはなりません。私の担当している新人にも絵柄で悩んでいる方がいますが、やはり自分では何が悪いのか、どういう描き方をすればよくなるのかわからないようでした。自分でいいなと思える絵柄をいくつか模写してみてはとアドバイスしてみたところ、瞳のタッチの入れ方をこう変えてみると今風になるとか、こういう骨格で描くと少年誌らしくなるとかだんだんわかってきたそうです。こういうことは自分で試行錯誤して体で理解しなくては自分のものにはなりません。模倣を重ねることによって作画効果の本質を体得できれば、それは自分自身のオリジナリティとするこ とができます。

 あなたのご友人が、模倣という行為への感覚が麻痺しているのか、デビューは果たしたものの読者の手応えがなく、絵柄を改造しないとこの先がないと思い詰めているのかわかりませんが、前者であれば友人として忠告してあげたほうがいいでしょうし、後者であればしばらく見守ってあげてはいかがでしょうか。


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