【質問と解答】

Q:アシスタントは経験した方がいい、とよく言われます。アシは大抵、新人が担当から斡旋されて仕事につくそうですが、連載作家は数えるほどで、アシを出来る人の数は限られているように思います。また、雑誌に何週にもわたってアシ募集の告知があるのをよく見かけますが、編集が抱える新人以外の一般読者にも募集をかけるということは、それだけ技術の見合う人材がいないということなのでしょうか。それほどまでにアシスタントにつくことは、難しいことなのでしょうか。相当の技術を要するように思えますが、いかがでしょうか。個人差こそあれ 新人が担当付になって、ヘルプとしてでもアシの仕事を経験できるようになるまでには、わりと時間を要するのが一般的なのですか。

A:アシスタントは、漫画の技術の習得だけではなく、アシスタントへの指示の出し方やスタジオ運営といった、連載作家になったときに役立つ実用的な知識を肌で吸収することができるので、プロを目指すなら一度は経験しておくべきです。一方で、長すぎるアシスタント業は独立心を減退させ上昇志向を失わせますので、2〜3年、長くても4〜5年を目処にアシスタントを卒業して連載獲得を目指しましょう。
 さて、編集部の新人だけでなく一般公募したり、ひとりの先生が何週も何か月も募集をかけたりするのは、実は志望者自体が少ないからです。新人や投稿者の多くは学生や社会人なので、時間の都合がつかない(先生の仕事に合わせられない)のが大きな理由です。また、やりたいと思っても、地方に住んでいて先生の仕事場が通勤可能圏内にないという方も多いです。アシスタントの上京から住居の面倒まで見られる先生は滅多にいません。そして、誰しもアシスタントはやったほうがいいとわかってるのに、プロの現場に入ることに気後れする、知らない人との付き合うことが苦手、人に使われたり叱られたりするのが嫌、といった性格的な消極姿勢からアシスタントを敬遠する方もかなりいます。
 もうひとつは先生サイドの事情です。トーンやベタなどをやる仕上げアシはスキルのハードルはそんなに高くありません。新人賞最終選考に残るくらいの力があれば問題なく採用されるはずです。問題は背景アシで、新人賞受賞者でもなかなか即戦力という方はいません。大きなスタジオならば、仕上げアシで採用して教えていって背景アシに育てますが、あまりアシスタントの人数を雇えない先生はそういう余裕がありません。即戦力の方しか採用できず、結果的にアシスタントに求める技術のハードルが高くなってしまうわけです。
 アシスタントを自分のところで鍛えて育てようという先生は、採用時のスキルはあまり高いものを求めませんが、それでもそれぞれの採用基準は持っています。たとえば、私が担当しているある先生がアシスタントを採用したとき、その応募者の背景カットは私の目から見ても下手なものでした。ほかに上手い人がいたのになぜその人にしたのか先生に聞くと、この人だけがスクリーントーンを線からはみ出さず貼っていたからという答えが返ってきました。経験上、そういう細かい気配りがちゃんとできる人は、教えれば伸びるのだそうです。採用基準は人それぞれ異なるでしょうが、個々の仕事場に合った教え方でスキルアップさせてくれるはずです。今のあなたの力で受け入れてくれる職場を探してみましょう。


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