【質問と解答】

Q:1)単行本になる際、どうして表紙や描き下ろし分の原稿料は出ないのでしょうか?

 2)色紙プレゼント等のイラスト執筆もどうしてギャラが出ないのでしょうか? 
 漫画家は「絵」を描くことが仕事で、依頼すればそれに対してギャラを払うべきではないでしょうか? それらが無料、サービスで描かされる事に疑問を覚えました。自分から色紙をプレゼントしたいとかなら分かるのですがプレゼント用の色紙を描いてくださいといわれ、強制的に描かされる。単行本の表紙等も同じように仕事として仕上げているのに。どうしてこれらはギャラを払わない事になっているのでしょうか? どうしても出版社の都合のいいように描かされている感じがします。

A:質問内容からしてプロの漫画家の方でしょうか。1)の答えは簡単で、印税分に含んでいるからです。たとえば描き下ろし小説や教養本の単行本などの場合、基本的に原稿料は生じず印税のみが著者の収入となります。強いて言えば、初版印税=原稿料というべきでしょうか。連載作品の単行本化はむしろ、本編はすでに原稿料を受け取った原稿の二次使用で済む、作家にとって非常においしいシステムなんですよ。

 2)は販売用ではなくプレゼント、つまり無償提供を目的としているので編集部に収益が生じないためです。あなたが不満を覚えるのは、これらを作家対編集部という二元的に考えるからです。自分は依頼されて絵を描く仕事をしているのに編集部はそれに対して報酬をくれない。しかし、編集部の立場に立ってみましょう。読者にプレゼントするだけで収益はないし、むしろ送料がかかる。プレゼント用のページもカラーならかなりの紙代・印刷代がかかる。他社の広告を掲載すれば数十万〜百数十万入るのに。では、なぜ企画するのかといえば、読者のためだからです。作家と読者と編集部の三元論で考えれば色紙プレゼントの意味も見えてきます。「自分から色紙をプレゼントしたいとかなら分かるのですが」と質問にもありましたが、連載で忙しい作家にはそういう発想や機会も見えてきません。そういう作家と読者の橋渡しを編集部は企画するわけです。それはひいては作家の人気上昇、単行本の売り上げ増を通じて間接的に編集部の利益と結びつくからです。そして、もちろん単行本の売り上げ増はあなたの印税収入増でもあります。
 色紙を強制的に描かされると言いますが、あくまで拒否する姿勢を貫けばできないことはありません。ですが、あなたという作家を押し立てていこう、作品を盛り上げていこうと企画しているのに、水を差すのはいかがなものでしょうか。どうも質問文から編集部や出版社への不信感がにじみ出ているようですが、担当の物言いが高圧的とかのために不要に反発してはいませんか。編集部のためではなく読者のために描いているんだと、あなたのほうが鷹揚に構えて割り切ってはいかがでしょうか。


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