【質問と解答】

Q:デジタル作画の環境とスキルについてご相談したいと思います。今、私の作画はすべてアナログで制作をしているんですが、以前からデジタルにもかなり興味を持っており、いずれは周辺機器をそろえていろいろやってみたいと思っています。がしかし、最低限の物をそろえるだけでもかなりの金額がかかりそうで、興味を持っていながらも簡単には手を出すことができません(特に、私の場合はパソコンの基本知識も微妙なんで。こっちの技術を先に磨け!と、どこからかお声が聞こえてきそうですが……)。
 デジタルを使いこなす事ができれば、遠方に居る作家さんのアシスタントをすることもできるし、いろんな意味でパソコンには慣れないといけないとは思いますが、(1)最低限デジタル作画に必須の物とそれにかかる費用、(2)デジアシスタントになるならば、どの程度の技術を習得する必要があるのか(3)デジアシのメッリト、デメッリト(4)最低限のものをそろえたあとに、読んでおきたいお勧めマニュアル本。長々と恐縮ですが、上記のことのアドバイスをお願いしたいと思います。

A:1)・パソコン:お持ちですよね? ただし、後述のソフトの推奨環境を満たしていなければ、カスタマイズするか買い換える必要があります。なるべく推奨環境ぎりぎりでなく、CPU、グラフィックボード、メモリ、ハードディスク容量のスペックに余裕を持たせましょう。スペックを一つ変えるだけで価格が変わりますので、パソコンについては価格を記しません。モニタも大きい方が作業がしやすいことは言うまでもありません。20インチ以上ののモニタがほしいところですが、これは徐々に揃えていけばいいでしょう。17インチあれば最初は十分です。
 ・スキャナ:A3対応スキャナが理想ですが、一番安いものでも10万以上します。A4対応スキャナならば実勢価格8000円台からあります。
 ・プリンタ:B4以上(A3)が出力できるレーザープリンタが理想ですが、モノクロレーザーで実勢価格3万台半ば〜8万、カラーレーザーで実勢価格5〜15万です。カラープリンタを兼用することを考えるとA3ノビ対応のインクジェットプリンタという選択肢もあります。実勢価格2万台半ば〜7万です。購入を考える際はショップで実際にプリントさせてもらうことをお勧めします。画質、印刷スピード、静音性を予算との兼ね合いでよく検討してください。
 ・ペンタブレット:8000円台からあります。
 ・Comic Studio 4.0EXもしくは4.0Pro(セルシス):漫画制作ツールソフト。EXは最上位モデルで、Proは下位モデルです。EXは税込標準価格48300円(実勢価格は3万円台半ばから)、Proは税込標準価格25200円(実勢価格1万円台後半から)なので、Proから始めると良いでしょう(さらに下位のモデルもありますが、かなり機能が制限されますので、プロを目指すならここからProかEXを選びましょう)。将来、必要になったらEXにバージョンアップできます。Mac版の4.0EXと4.0Proも'08年9月26日発売予定だそうです。
 ・Photoshop CS3もしくはPhotoshop Elements(Adobe):画像編集ソフトのスタンダード。通常の漫画制作ならばComic Studioだけでも十分ですが、より高度な加工やカラーイラスト制作にはこのソフトですね。また、プロの仕事場ではComic Studioは必ずしもポピュラーではないのですが、Photoshopを使いこなせれば、どこのデジタルアシスタントにも入れます。ただ、漫画制作専用のソフトではないので、初心者が一からこのソフトで漫画制作を始めるのはつらいです。最初はカラーイラスト専用と割り切っておいたほうがいいかもしれません。CS3は税込標準価格100000円(実勢価格90000円前後)と高価なので、税込標準価格14400円(実勢価格13000円前後)のElementsから使い始めるといいでしょう。プリンタやパソコン付属の写真編集ソフトなど、Adobe指定のアップグレード対応ソフトを持っていれば実勢価格8000円台のアップグレード版の導入も可能です。Photoshop Elementsの現行モデルは「Photoshop Elements 6」ですが、'08年10月10日にWin版「Photoshop Elements 7」が発売されるので、購入を考えるならもう少し待ってはいかがでしょうか。

 2)必要な技術はアナログ環境のアシスタントと同じです。それがデジタル環境でできるようになっていればOKです。背景作画に関しては、線画までアナログ環境で作画してスキャナで取り込んで仕上げをする仕事場と、線画もデジタル上で作画するフルデジタル環境の仕事場があります。3Dでモデリングをおこなったりパースをとったりする先生もいますが、それはそれぞれの仕事場で教えてもらうと良いでしょう。

 3)メリットとしては自宅でも作業ができるということ。自分の作業ペースで進められますし、移動にかかる時間や交通費を節約できます。デメリットは、別々の場で作業をしていると先生や先輩アシスタントから技術を学べないこと。スケジュール管理を自分でしなければならないこと。
 いずれも在宅アシスタントの場合で、デジタル環境での作画であっても同じ仕事場で作業する場合はアナログ環境とさして変わりません。まあ、失敗しても一段階前の工程に戻すことができますし、アナログに比べて修正が簡単なので、他人の原稿を扱うプレッシャーがなくなるのは心理的に大きなメリットかもしれませんね。トーンくずやインクの汚れが体に付着することもありませんし(笑)。

 4)とにかくComic Studioを使えるようになることが第一歩なので、最新版である4.0対応のガイドブックを紹介しておきます。『あなたもマンガが描ける ComicStudio 4.0 公式ガイド』(アスキー)『はじめてのコミックスタジオー“ツール”でコミックを描く! Comic Studio「Ex」「Pro」「Debut」』(工学社)。
 Photoshopの漫画制作ガイドとしては『キャラクターをつくろう! Photoshop漫画テクニック』(ビー・エヌ・エヌ新社)『キャラクターをつくろう! Photoshop Elements漫画テクニック』(ビー・エヌ・エヌ新社)が発行日も比較的最近ですし入門書としても良さそうです。Photoshop Elements 6のガイドとしては『速効!図解 Photoshop Elements 6 Windows版』(毎日コミュニケーションズ)を挙げておきます。


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