【質問と解答】

Q:私は一年ほど前から担当付きで漫画を作製しております。昨年、コレまで趣味の領域であった漫画が果たして職業として成立していけるのかを確かめるために上京し、多数の出版社に持ち込みを行ってみました。大半の出版社では名刺ををもらって「またどうぞ」という形だったのですが、一社だけ幸運にも担当が付いて下さる事となったのです。無論、即連載などと言うわけではなく、当面は代原(代理原稿)を作製して欲しいと言うことで、ネームを切る事となりました。ここまではたった一度の、しかも初めての持ち込みで得られた成果としては非常に幸運な事だったのですが、問題なのはココからで、やはり未熟者な為かなかなかまともなモノを作製する事が出来ず、担当さんが付いて下さってから最初の作品を作って入稿するまでに一年近い時間が掛かってしまいました(入稿はつい先日の事です)。最初の時点で先の事は結果次第でという話でしたので、コレで関係はもうおしまいだろうかと入稿の際に恐る恐る、「新しい代原を作製しても宜しいですか?」という話を担当編集さんにしてみ たところ、「新しいのを作製してもらう分には全く問題ない」という事で現在は新作の作製に取り掛かっている次第です。

 さて前置きが長くなりましたが、今回の質問は、「私はどの様に編集から見られているのか? また現在の扱いは代理原稿を作製する作家としては普通なのか?」というものです。そのような話、本人に聞けば良いではないかと思われるかもしれないのですが、せっかく掴んだチャンスをこの質問を行って失うのではないかと言う危惧から、なかなか聞きづらいと言うのが実情で、また話をしている限りは向こう側が私を見限っているようにも感じないのです。ですが、基本的にこちらから電話をかけない限りは編集さんとの打ち合わせも2〜3週間に一度程度で(基本的に私が待ちきれなくなって連絡をとっているという形です)、時折それとなく話題にしても「忙しくて本当にすみません・・・」という形になってしまいます(最近は連絡が取れないときはメールで何時までにという内容のものが時折きます。ない場合もまれにあります)。電話からうかがえる限りでは、担当編集さんは非常に紳士的で感情を荒げると言う事の素振りすら見せられない方です(注意や指摘を受けても叱られるという状況を経験したことすらありません)。こちらから連絡をすれば必ず対応してくださるのですが、向こうから率先して連絡をされるのが難しい状況みたいです。非常にうぬぼれた話なのかもしれませんが、こうした現状が非常に不安で、「結局のところタダの投稿者と変わらないのではないだろうか?」と段々疑心暗鬼に陥っているこのごろです。

A:まず、代原(代理原稿)とはどういうものか、確認の意味も含めてお話ししておきます。代原とは文字どおり、本来掲載されるはずだった原稿の代わりに載せる原稿ということで、連載漫画が突然落ちたり減ページしたりとか、休載が重なって編成に急遽空きができたときのために、どこの編集部でも様々なページ数の代原のストックを持っています。この代原というのは通常、読み切り掲載レベルには達しているものの連載企画を提出するにはまだ早いと見なされる新人作家に、練習の意味合いも含めて描いてもらいます。原稿が完成した段階でほぼ掲載が確実なレベルの作品であれば、買い取りという形で原稿料が出ることもありますが(買い取りといっても著作権を失うわけではありません。通常の原稿料と同じ意味合いです。また、掲載号未定の買い取りは半額支払いで、掲載後に残り半額が支払われることが多いです)、代原は編集部には あくまで依頼原稿とは見なされておらず、代原作家(などという言葉はないのですが)は投稿者とプロの中間的な存在でしかありません。
 あなたの場合、扱いとしては投稿者とさして変わりはありませんが、代原を描かせるということは雑誌掲載レベルには達していると評価してもらっているという意味ですし、対応を読んだ限りでは担当編集者はちゃんとした方だと思われます。代原であっても雑誌に掲載されれば読者の反応は知ることができますし、評判が良ければ連載へのチャンスもつかむことができます。実際、代原掲載がきっかけで連載枠を獲得して人気作家になった先生もいます。まったく将来を期待しない方に代原を描かせることはありません。ただ、編集部には掲載を待っている代原が何作もあるでしょうから、しばらく掲載の見通しが立たない場合や、あるいは掲載されても足踏み状態が続くなら、担当と相談して新人賞に回してもらい編集部内での再評価を受けるのも手でしょう。


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