【質問と解答】

Q:電話帳ぐらい分厚い成年向け漫画雑誌のなかには、性器への修正がほとんど意味のない程にしか入っていないものがあります。それも数誌あるようです。性器の90%ほどが丸見えでしかも、核心部分をあえて見せるような修正の施し方をしています。しかも新人賞の寸評を見るとご丁寧に「性器の描写がおもちゃのようです。もっと丁寧に描きましょう」などと、わざわざ性器描写にまでコメントしてあります。これは法律に触れるのではないのですか? あるいは修正さえ入っていれば、それに意味がなくても修正が入っていると言い訳できるのでしょうか? ビューティーヘア氏などの漫画家はわいせつ罪に問われたと聞きますが、今でも描いている…と、いうことは法の改正か何かあって描いてもよいことになったのでしょうか?
 また、漫画家だけが訴えられるというのも腑におちません。あるいは掲載したほうもろとも、でしょうか…? つまるところ、私は訴えられるのでしょうか?


A:成年向け漫画誌には性器修正をかなり甘くし、またそれを売りにしている雑誌があります。問題があるとは思いますが、ここは是非を論じる場ではありませんので、コメントは控えさせていただきます。あなたがあえてそういう雑誌を投稿・持ち込み先に選ぶのならば、雑誌の方針に従わざるをえないでしょうが、投稿を考えていないならば気にすることはありません。漫画家が逮捕・ 拘留されたことで衝撃が走った松文館事件ですが、逮捕されたのは漫画家のビ ューティヘア氏だけではなく編集局長と版元である松文館の社長の3人です。 ビューティヘア氏と編集局長は略式起訴で罰金刑で、社長は起訴されて懲役刑の判決が出ました。その後、上告して再審で罰金刑に減刑されましたが、つまるところ漫画家よりも掲載したほうが重い罪に問われるわけです。また、法の改正があったわけではありませんので、印刷時に性器が無修正もしくはほとんど修正が入らないとわかっていて出版に同意した場合は版元や編集の責任者のみならず漫画家も罪に問われる可能性があると思っておいたほうがいいでしょ う。
 ただ、性器の精細な描写自体について言えば、一般青年誌でも何人ものかなりメジャーな作家さんが行っているのを知っています。もちろん、一般青年誌ですから、成年向けエロ漫画誌と違って製版段階でモザイクやホワイトの全面修正が入ります。雑誌ではどうせ消されるとわかっているのになぜ描くのかというと、それは表現者としてのこだわりなのでしょう。エロティシズムを表現する場面で性器を描かないのは、表現の手を抜くことだと彼らは考えます。いえ、考える以前に描かずにはいられないのでしょう。雑誌では部分修正がかかっても、1枚の絵として完璧を目指さざるにはいられない作者の原稿に向けた想いと熱量は画面に現れます。
 エロ漫画誌の新人賞の寸評はおそらくそこまで考えてのことではなく商業主義に則ったコメントなのでしょうが、漫画家を目指すならば、描写自体の是非を云々するのではなく、絵に対する想いをまず大切にしてください。


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