【質問と解答】

Q:こちらの「30の質問箱」で、過去の担当さんに大手出版社からの作家さんへの依頼を、作家さんを通さずに勝手に断られていた、という内容がありましたが、このような事は今でも起こりうるのでしょうか? もし、ある出版社で漫画を出している作家さんに、他の出版社の方がコンタクトを取りたがっている場合、やはり今所属されている出版社を通さないといけないのでしょうか? (直接コンタクトをとる例は少ないのでしょうか?)
 また、こちらでもよく見かけますが、デビュー前、または後に、ネーム等を送っても放置しがちな担当さんは、珍しくはないのでしょうか? 漫画業界は、失望覚悟で臨むような世界と心構えをしていた方がよいのでしょうか……?


A:他社からのコンタクトを編集部でシャットアウトするのは、別に珍しい事ではありません。編集者の立場に立ってみればわかると思いますが、発掘して手塩にかけて育ててきて、さぁこれからという作家を、とんびにあぶらあげよろしく横からかっさらわれて気持ちよいはずがありません。また、例えばいつも締め切りぎりぎりの作家だとしたら、他社の仕事を紹介して、わざわざ原稿を落とす危険を冒したいと思うでしょうか。作家の連絡先を他社の編集者に簡単に教えてくれる編集部はまず無いと言っていいでしょう。例外は、事務所にマネージャーもいる大御所(マスコミ電話帳などに事務所の連絡先が掲載されてたりします)や、すでに複数の出版社で仕事をしている作家、1誌だけでは収入が心許ない4コマやショートの作家、すでに雑誌のレギュラーを卒業した作家などで、取り次がなくても連絡先が容易に知れる方や自誌だけでは十分に仕事を提供出来ない方には他社からの仕事依頼を取り次ぎます。
 他社で描いている漫画家さんへのコンタクトは、出版社を通さず直接とるのが普通です。出版社を通すのは、連絡を取る手段が他にない場合と、過去作品の出版権を取得したい場合くらいです。昔はまだインターネットが普及していませんでしたが、今は個人でブログやサイトを立ち上げるのが容易ですので、積極的に仕事を取りたい作家はそれらによって窓口を開いています。ですから、出版社の思惑はどうあれ「作家を通さず勝手に断られていた」というようなことは、今はないでしょう。
 ネームを放置する担当編集者については、この相談室を始めてから受けた相談の多さに当方もびっくりしています。それでも、編集者の絶対数から見ると問題編集者は少ないはず、と思いたいです。ただ、仕事相手や上司、指導者、先輩に恵まれないことは、漫画業界のみならず芸能界やスポーツ界などの他業種や一般の会社でもあることです。社会に出るということは、そういう不本意な出会いも起こりうるということですから、失望覚悟で臨むなどと後ろ向きな考えではどの業種でもやっていけません。むしろ、雑誌を移ることも容易な漫画業界は、不本意な仕事相手に当たってもやり直しがしやすいと前向きに考えていきましょう。


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