【質問と解答】

Q:「受賞作品の版権は○○社に帰属します」などとよく公募に書いてありますが、もし受賞した場合に原作者はインターネットなどでその作品を使った活動は制限されますか。

 A: 回答が大変遅れてしまったことをお詫びいたします。
 まず、よく耳にする「版権」という言葉ですが、現在、この言葉は正式な法律用語ではありません。明治32年の著作権法制定(ちなみに原稿の著作権法は昭和45年に公布されたもの)によって旧版権法にあった「版権」は「著作権」と改められました。ですから、法律上「版権」=「著作権」と考えていただいて結構です。今でも「版権」や「版権・著作権」と並べて表記することが多いのは、当時の出版法での版権登録と「版権所有」の表示の義務の名残なのでしょう。ちなみに著作権法では、この登録主義を廃し、著作権は著作をすることで自然発生すると規定されています。
 さて、「受賞作品の版権は○○社に帰属します」という表現ですが、著作権(版権)は財産権ですから譲渡が可能です。ですから、「受賞作品の著作権を我が社に譲渡してくださいね」ということです。ただし、著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は失うことはありませんからご心配なく。著作者人格権の中の個々の権利について述べると長くなりますからはぶきますが、簡単に言うと、あなたが著作者だという事実と著作者としての主張は尊重されますよ、という事でしょうか。
 問題は、この公募の文章での「版権」が具体的にどんな権利を指しているのか、という事です。多くのマンガの新人賞の場合、著作権のすべてではなく、慣例的に「出版権」のみを指しています。その「出版権」ですが、著作権の一部で、複製権と頒布権から構成されています。ですから、同人誌に受賞作品を掲載して販売する、というような行為はこれに抵触します。インターネットでの活動、たとえば自分のHPでの作品紹介やキャラクター表示等は出版権の侵害には該当しませんが、活動内容によってはそれに準ずる行為になると考えられます。今の出版契約書にはたいてい電子出版についての条項も盛り込まれていますので、それに従ってください。ただ、ほとんどの新人マンガ賞では受賞時に契約書を取り交わすことはありません。その場合、単純に雑誌への掲載権などを指していますので、あまり深刻に考える必要はありません。しかし、インターネットでの活動は編集部に事前に話を通しておくべきでしょう。
 先ほど、多くの新人マンガ賞ででは「版権」が慣例上「出版権」のみを指すと言いましたが、もちろん例外もあります。それぞれの出版社や編集部での考え方もありますし、メディアミックス展開を前提とした公募等では当然、映像化権、翻案権、翻訳権、商品化権など出版権以外の著作権を含む内容になっている事が考えられます(たいてい応募要項に記載があります)。そのような性格の公募の場合は、受賞時に必ず契約書を取り交わすことになります。インターネットなどでの受賞作品を使った活動は制限されると思われますが、どうしても使用したいならば、事後のトラブルを避けるためにも契約時に交渉して契約条項に盛り込んでもらう事を交渉してみてはいかがでしょうか。

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