やる気一つでやれちゃう持ち込み。「見る前に飛べ」としか言えないのですが、いろんなことが気に掛かってなかなか踏み切れずにいる‥‥。そんなアナタのために基本的部分から、持ち込みを受ける編集者の気持ちまで、わかりやすく説明しましょう。
 さあ、以下を読んで迷いを断ち切ってレッツ持ち込み! 


●原稿持ち込みに必要な物

 もちろん原稿。これがなくては話になりません。コピーなんてもってのほかです。ネームだけなんてのはさらにいけません。
 編集者は原稿から様々な事を読み取ります。ペンの使い方やトーンの貼り方、仕上げの手法など、実際の原稿から、この人はどのくらいの経験や漫画を描くうえでの知識をもっているのか、はたまた商業誌経験者なのか、などなど。
 原稿は持ち込みの場において、アナタの全存在なのです。それを提示できなくては編集者はアドバイスもコメントもできません。


●持ち込みの一般的な流れ

 持ち込み募集のページに書いてる電話番号に連絡、アポイントをとります。電話を受けた編集者がそのまま受け付けてくれる場合もありますし、新人担当者が対応したりなど雑誌や出版社によって多少の違いはありますが、次のことをしっかりと伝えましょう。

(1)名前 (2)持ち込みに行きたい日時 (3)自分の連絡先

 (1)は当然です。
 (2)は何日か候補の日をあげたほうがよいでしょう。
 (3)ですが、双方が連絡できる状況にあるというのはお互いにとっと安心です。
 例えば、アポイントを取っていた編集者に約束していた時間にどうしても外せない打ち合わせが入ってしまうなど、急に都合が悪くなる事がないわけでもありません。そこでほったらかして知らんぷり、とはなりませんが、そういうイレギュラーな状況になったとき「かわりに誰が対応にあたる」、「日時を変更できないか」など、事前に連絡ができます。
 当日になって慌てたり不安になることを避けるためにも、連絡先を伝えておく事をお勧めします。

 次にしっかり確認しておく事。

(1)担当者の名前 (2)編集部までの行き方

 (1)を知らなければ持ち込みのしようがありません。
 (2)で大事なのは交通機関でのアクセスの仕方です。
 持ち込み募集のページの略図だけをたよりにせず、きちんと確認しておきましょう。東京の交通機関は複雑です。地方から持ち込みに来る人は、乗り換えを間違えて時間に遅れたりしないように注意を。
 もう一つ、持ち込み先の編集部が出版社のビルの何階にあるのかも確認しておけば、より確実です。


●編集者はこんな持ち込み君を求めている

 もちろん「やる気のある人」です。持ち込みは何も1本だけとは限らないので2本3本まとめて持ってきてもいいですし、持ってきた原稿を読み終わったあとに「じつはこんなのもあるんです」と以前に描きあげた原稿や今取り組んでいるネームを出されたりすると、編集者は「おっ! やる気あるな」と思うもんです。
 当たり前ですが、アナタと編集者はいま出会ったばかりです。判断する材料が多ければ多いほど、見ず知らずのアナタにしてあげらるアドバイスやコメントは増えます。
 ここが持ち込みと新人賞の違いです。新人賞では落選してしまえば原稿が返却されてそれまでです。しかし持ち込みの場合、たとえ好評価が得られなくても(むしろそのほうが圧倒的に多いというのが現実です)、自分に何が不足していたのか、どうしたらもっとよくなるのかなど、様々なアドバイスが聞けます。逆に自分では気付いていなかった才能、目指すべき方向性なんかも聞けるかもしれません。
 また、持ち込みは一方的に批評を聞いているだけではなく、どんどん質問してもいい場所です。今後のステップのふみ方とか、作画のテクニックもちょっとしたことなら教えてあげられます。専門学校や友達からは学べないことが聞けるかもしれません。


●編集者が困る持ち込み君

 具体的な原稿を持ってこないのも困りますが、持ってきた原稿がいい評価が得られなかったからといって身も世もないくらいに落ち込んで帰るというのもやめましょう。
 前項でも書きましたが、持ち込みにおいて好評価がすぐに得られることは極めて稀です。ヘコむ気持ちもわかりますが、そこでわかってほしいのが編集者はイジワルや「コイツをつぶしてやろう」とかそんな考えで持ち込みを受けているわけではないのです。編集者もそれなりに忙しい会社員です。わざわざ時間を削ってどこの誰とも知らないアナタをけなしてやろう、なんてほどヒマではありません。むしろこの出会いが良いものになってくれることを祈って持ち込みにあたっています。
 もし仮に、ここで不親切な編集者と親切な編集者を見分けるならば、批評もサラッと一言ですまし、早く切り上げようとする編集者は不親切な編集者です。持ち込みに対してあまりやる気がありません。逆に、たとえマイナス評価でも1つより3つ、5つより10の批評をしてくるのは親切な編集者と言えます。それは持ち込みという、仮そめの出会いの中でアナタにちゃんと誠意ある対応していることなのですから。
 持ち込みには「批判上等」くらいの気分で行きましょう。落ち込んでもいいけど、それは100回持ち込んでダメだったときにとっておくべきです。


●持ち込み先の選び方

 特に悩む必要はありません。あるのは「この雑誌に載ってみたい!」というただ1点のみ。毎月毎週読んでいる好きな雑誌の持ち込みページをチェック、アポイントをとりましょう。
 それでも悩む、という人に1つアドバイスがあるとすれば、逆になるだけ多くの編集部を回ることをお勧めします。持ち込み先は1社1編集部と決まっているわけではないのですから。
 それに各雑誌の編集部やそれぞれの編集者によって評価のポイントや作品作りの考え方は結構違ったりするもんです。A編集部では「×」といわれたものがB編集部では「○」といわれたりすることもなきにしもありません。ですから少年誌で描きたかったら同じ作品を持って『少年ジャンプ』『少年マガジン』『少年サンデー』『少年チャンピオン』など回ってみるのもいいですし、同じ出版社の少年誌からヤング誌、マニア誌という回り方もあるかもしれません。そのうえで、方向性があいそうな編集部や考え方があいそうな編集者とつきあっていく、と考えればそんなに悩まなくてもいいはずです。むしろそのほうが幸福な出会いに行き着く確率が高くなるでしょう。
 特においそれと上京できない地方の方は、滞在中にできるだけ多くの編集部を回るようにしたほうが絶対いいはずです。


 持ち込みは、作品を批評されてショボクレて帰ってくるためにあるのではありません。客観的な視点でアナタの漫画力がどのくらいなのかを測るためのものなのです。データは多いほどいい。
 恥ずかしがったり、気後れするのは持ち込みにおいてマイナスでしかありません。アピールあるのみです。
 それでなくてもプロになるということは、不特定多数の読者に批評を委ねるということにほかなりません。読者の「面白い、面白くない」という批評はもっと冷酷です。編集者の批評ごときでくじけていては先が思いやられるというものです。
 では皆さん。元気のいい持ち込み、手ぐすね引いてお待ちしております。

【青年誌編集者K】


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