《出来上がり原稿に対するくろがね氏の感想と村井氏の考え》

P.1

[くろがね]
 のっけに今回の主役(?)をドカンと見せてしまうという大胆な構成です。大砲のように太くて長い銃身が印象的です。ちょっとグリップとトリガー・ガードが小さく見える気もしますが、この銃の凶暴さがよく伝わってきます。一番難しいのは重量感だと思いますが、それがよく表現されているのではないでしょうか。
 参考に金属モデルガンをお貸ししたんですが、村井先生にはぜひとも実銃を見ていただきたいと思いました。凶暴だけれど芸術品のように美しいガン・ブルーの肌は、写真等ではなかなか伝わらないものですから。

[村井]
 描き終わってみると、トリガーガードの卵のようなラインを表現しそこねたなあと思いました。そのせいでグリップとトリガーガードが小さく見えるのだと思います。


(2)P.2
[くろがね]
 私は個人的にはこの上のカットが一番好きです。44(ヨンヨン)マグナム銃の巨大さが一番よく現れているカットだと思います。
 トリガーに指がかかっていますが、そんなに銃に詳しくない人なら、実弾が入っていてもこうやって持ってしまうでしょう。ただし、アメリカの警官の前などで、こう
してトリガーに指をかけて銃を持つと、実弾の有無にかかわらず撃つ意志があると判断されて射殺されかねませんので、ご注意を(そんな機会はめったにないけど)。

[村井]
アメリカの警官の前ではやめておきます。


P.3
[くろがね]
 例外もありますが、基本的には銃の表面仕上げは、鏡のようにピカピカです。黒い鏡とでも表現すればいいでしょうか。その感じが出るともっと良かったような気がします。
 下のコマは、銃好きがよく手に持ったときに眺めるアングルです。ちょっとドキッとしました。見透かされているというか。さすがです。

[村井]
 重量感や使い込んでいる感じを出すためにカケアミで表現しました。鏡のような表面仕上げはまた今度チャレンジしたいと思います。

P4
[くろがね]
 この凶銃が5人を殺し、いまはシリンダー(回転式弾倉)が空になっているということを1枚の絵で表現している素晴らしいカット。犠牲となった5人のキャラクターと殺害場所もバラエティがあって、しかも説得力があるので、それぞれの話が描けそうなほどです。すなわちドラマチック。センターのシリンダーが効いています。

[村井]
 いやぁ〜それほどでも〜。

P.5
[くろがね]
 やはり絵がお上手なので、一番上の実弾のカットは怖いですね。予想していなかったことなのですが、こんなに怖くなるとは思いませんでした。この口の裂けた弾丸が飛んでくるかと思うと、ゾッとします。
 ただ、隣のカットで弾丸を装填しているのですが、カートリッジが全く見えないので、ちょっとわかりにくい気もしました。
 中段のコマではシリンダーを勢いよく回転させて、ロシアン・ルーレットができるようにしているのですが、これは村井先生ともよく相談してシロートという設定なら良いだろうということで描いていただきました。実際には大変危険なのでやりません。
 もしアメリカの射撃場でこんなことをしたら、すぐにレンジ・マスターが飛んできてつまみ出されてしまうでしょう。アメリカのテレビや映画でときどき見かけますが、映画用の空砲銃(ステージ・ガン)だから許されることなのです。誤解なきよう。
 一番下のコマで、撃鉄(ハンマー)を起こすと、ハンマー・ノーズというパーツが見えるようになります。村井先生にはモデルガンを参考に描いていただいているのでしようがないのですが、実銃ではこのパーツはもっと下向きで、可動になっています。
そうでないとカートリッジのセンターを水平に叩くことができないからです。モデル
ガンはセンターに当たらなくても良いので、そのへんは省略されています。

[村井]
 カートリッジを装填しているコマは指を少しずらしてカートリッジが少し見えるようにすればよかったと思いました。
 ハンマーノーズのことは資料もいただいたのですが読み取れませんでした。しくじりました。


P6
[くろがね]
 前回も書きましたが、銃口が自分を狙っているというのは、絵であっても怖いものですね。ライフリングも正確に描き込まれ、大迫力のカットです。
 実銃では発射したときの反動がとてつもなくでかいので、こうやって両手でしっかりと構えて撃ちますが、ほとんどの場合、反動で両手は離れてしまいます。また、耳栓をしていないと44マグナム弾などでは鼓膜が破けてしまうこともあります。

[村井]
 自分でも怖かったりして…。

P.7
[くろがね]
 いいですね。特に上段左のコマがいいです。モデルガンでも再現されていますが、実銃ではトリガーを弾いたときだけ漫画のように撃鉄(ハンマー)は深く倒れ込むことができます。トリガーをもどすと、ハンマーも規定の位置にもどる仕組みです。ここまで漫画で描いていることはめったにありません。ガン・マニアも納得のカットでしょう。

P.8
[くろがね
 ここでも上のコマで撃鉄を起こすカットがあり、ハンマー・ノーズが見えていますが、P.5と同様に実銃ではやや下向きです。トリガーを引いたとき、このノーズはまずフレームに当たって水平に修正され、それからさらに押し込まれてカートリッジの底部中央を打撃するわけです。斜めに叩くと実銃では不発になることがあります。
 中段下の一番大きなコマの銃のカットは、この銃の長銃身ぶりをよく表しています。
実際にこの角度で、この持ち方で撃った場合、手首の角度に無理があるので銃は反動で飛んでいくかもしれません。

[村井]
 自分はM29のガスガンを所有しているのですが、ハンマーノーズをいじったら動いてびっくりしました! 良くできてるわー。


P.9
[くろがね]
 しかし銃は飛んでいかず、この漫画のように手にぶら下がっているかもしれません。
これは実験できないので(当たり前)なんとも言えません。また頭部もこのように消し飛んでしまうのか、これも不明です。ただ、スイカなどの内部に水分の多いものは、弾丸のエネルギーをすべて受けて破裂します。たまにスポッと貫通ということもあるようですが。

[村井]
 頭部がどうなるのか気になるところですが、資料写真があっても見たくない感じです。

P.10
[くろがね]
 銃の厚みがわかる素晴らしいカットです。リボルバーはレンコン型のシリンダーがあるため、こういう角度で見るととても立体感が出ます。そこで月刊Gunなどの写真では好んでこういった角度で撮影するわけです。
 個人的には撃ったすぐ後なので、銃口から薄く硝煙が立ち上っていても良いかなと思いました。
 全編に渡って言えることなのですが、前回のグロックなどはつや消しの黒で、グリップ部分も一体なので、黒一色ですが、S&W・M29は深みのある限りなく黒に近いブルーで、木目の美しい明るい茶色のグリップが付けられていますから、ぜひカラーで描いて欲しいところでした。ちょっと血はリアルで生々しくなってしまうでしょうが。村井先生がガン・ブルーをどんな色で表現されるか、とても好奇心をそそられました。
 最初のページが弾なしの銃口上向き、右側面で、最後のページが弾ありの銃口下向き、左側面という対比が意味深です。

[村井]
この絵は自分でも気に入ってます。