【銃器設定/くろがねゆう】
1)「主人公の銃」
女の子でもプロという設定なので、使用する銃は依頼された仕事ごとに、ターゲットや状況に合わせて最適の銃を選ぶものと考えました。ターゲットによってはサイレンサーが必要なこともあるでしょうし、小型の銃でないとダメなこともあるでしょう。また.500マグナムなんていう、アメリカ人の大男でも撃つのがやっとなどというモンスターガンを使わなければならないこともあるかもしれません。それは、毎回のお楽しみということにします。
さて、彼女はその存在を極力知られないようにしているはずですが、それでも仕事柄、いくら日本とはいえ、普段でも命を狙われる可能性があるということで、自分の護身用ピストルを持っていると想定しました。個人の、それも護身用の拳銃ですから、ポケット・サイズで携帯性に優れていることを第一条件としました。さらに、個人用なので思いっきり女の子らしい趣味で選んだ感じも欲しいところです。
まず、そのポケット・ピストルの銃種としては、至近距離で使用され、とっさの場合でも初弾を素早く撃てる銃のほうがいいので、回転式拳銃(リボルバー)は除外しました。初弾をダブル・アクションで素早く撃つのは、力が必要なので女の子には特に不利なのです。
また一般的な口径の中から、護身用にふさわしいものを考えると……軍用である9mmパラベラム弾(9mm×19)は明らかに攻撃的な弾薬でしょうからそれ以下、.380(9mm×17)としました。実際、私自身実銃を射撃してみたこととがありますが、反動が軽く(逆に言えば威力が弱い)、サイズ的にも護身用に最適だと思います。音もそこそこ小さいです。
よく女性の護身用だとガーター・ベルトに挟んで隠しておけるような.25口径が選ばれますが、あれは敵に対して銃をくっつけるようにして使う銃なので、どちらかと言えばシロートに近い者が使う銃というイメージです。もちろん威力はさらに弱いです。
そこで、現代のピストルの中から、優秀な.380口径のポケット・ピストルをリスト・アップしてみると……、
○グロック25(15連発)、グロック28(10連発)
ベースが9×19mmで、複列弾倉のたためグリップが角張っていて大きく、特に女性には握りにくい。
○ワルサーPPK、PPK/S(7連発)
かつて007ことジェームズ・ボンドのトレード・マークでもあった。現在はオリジナルのドイツではなくアメリカのS&Wで作られているという。さすがに 今となっては古い感じがぬぐい去れない。デザインは素晴らしい。実際に撃ってみた感じでは少々作動不良が多いように感じた……。
○ベレッタM84FS(13連発)
ファッションの国イタリアの銃なので、女性好みの銃だが、やはり複列弾倉でグリップが太い。
●SIGザウエルP230、P232(7連発)
ワルサーPPKに似たデザインで、現代銃なだけに信頼性が高いといわれる。日本の警察でもP230の日本向け仕様(手動セフティ付き)が採用されてい る。P232はP230の改良型でトリガー、サイト、グリップなどが変わっているが、スライドの滑り止め溝加工部分(セレイション)の細かなデザインなど、ガン・ファンからはP230の方が優れているとの声も多い。メンテナンスが楽で、しかも見た目に美しいステンレス・モデルもある。
というわけで、いろいろ悩んだ末、SIGザウエルP230にしました。現在販売されているのはP232のみですが、彼女はそれ以前に入手していたはずなので問題はないと思います。もちろん美しいステンレス・モデルが彼女にはピッタリでしょう。ただし、グリップはオリジナルの野暮ったい黒いものではなくて、特注して自分でデザインしたカワイイものに付け替えてあるという設定はいかがでしょうか。
SIGザウエルP230ステンレス・モデル基本仕様(スペック)
口径:9mm×17(.380ACP)
全長:168mm
重量:590g
装弾数:7発+1発(薬室内)
2)「スクリーン・TVのP230」
■『アウト・オブ・サイト』(Out of Sight・1998・米)
主役のFBI捜査官を演じるジェニファー・ロペスが、誕生日に父から贈られる豪華なケースに入った拳銃がP230のステンレス・モデル。「なんて美しい銃なの」というセリフがある。
■『キラーズ』(KILLERS・2003・日)
5本のガン・アクション・オムニバス。その1本、大川俊道監督作品『CANDY』で主役の星野マヤが使用。
■TVアニメ『マイアミ・ガンズ』
毎日放送系でオン・エアされたアクション・コメディ。DVDも発売されている。主役、桜小路妖の相棒、天野ルウの愛用銃。
http://mbs.jp/miami/
3)「襲撃犯たちの銃」
車でターゲットのそばを通過して狙撃するという手法は、アメリカのギャングたちが1920年代に使って有名になったもの。襲撃と逃走が簡単だという利点がある反面、揺れ動く車から撃つので命中率が悪かったようです。
短時間でターゲットに致命傷を与えなければならないことから、フル・オート射撃が可能なサブマシンガンが使われることがほとんどです。当時アメリカではトンプソンが使われ(実際にはあまり多くなく、その後作られた映画によってそういうイメージが作られてしまったのがホントのようです)、特に事件の多かったシカゴで使われたので、別名シカゴ・タイプライターの呼び名もあるほど。
さて、今回の設定ではワン・ボックス・カーから狙撃することになっていますが、数人の男たちということもあり、できるだけ小さいサブマシンガンがいいだろうと考えました。全員が同じ銃というのも軍隊のようで不自然なので、今回は以下の2挺を想定しました。
ただ、原作では薬莢がバラバラと路上に飛び散ることになっていますが、これはリアルではありません。せっかくワン・ボックスから撃っているのですから、銃を外に突きだして目立つよりも、中で撃った方が有利です。目撃もされにくいし、薬莢も残しません。薬莢は銃特定の重要な手がかりとなるのです(つい最近、台湾の総督選挙で狙撃事件があり、薬莢が落ちていたことからいろいろ話題になりました)。リアルさでいけばサイレンサーも付けたいところです。
漫画の効果ということを考えると、薬莢を路上に撒いた方が派手でカッコいいですが。
●マイクロ・ウージー
イスラエルが開発したウージー・サブマシンガンをベースに、まず同じ弾薬を使いながら全長で11cmほどコンパクトにしたミニ・ウージーが完成された。 それをさらに10cmも小さくすることに成功したモデルが、マイクロ・ウージー。ストックを折りたたんだサイズは、全長25cmと大型拳銃程度しかない。ただし無理して小型化したため、フル・オート射撃の連射速度は1分間に1,400発(一説には1,700発)もの高速になっている。1秒間に23発 という驚異的数値だ。こうなると撃発音は連なって1発のようになり、ぞうきんを切り裂くようなビーッといった感じに聞こえるという。
●イングラムM10
1960年代に開発され、小型サブマシンガンの代名詞のようになった銃。M10はやや大型で.45ACP口径と9mm×19口径の2種類が知られてい る。M11はそれを小型化したもので、9mm×17(.380ACP)口径、マイクロ・ウージーほどのサイズ。専用の大型サイレンサーも有名。つい最近、宇都宮で発生した暴力団組員立てこもり事件で犯人が所持していたとされる。
マイクロ・ウージー基本仕様(スペック)
口径:9mm×19
全長:460mm、250mm(ストック折りたたみ時)
重量:2,000g
装弾数:20、25、32、40発
発射速度:1,400発/分
イングラムM10基本仕様(スペック)
口径:9mm×19
全長:559mm、298mm(ストック折りたたみ時)
重量:2,720g
装弾数:32発
発射速度:1,050発/分
4)「スクリーンのマイクロ・ウージー」
■「マトリックス・リローデッド」(Matrix Reloaded・2003・米)
冒頭、ビルから落ちながらトリニティ(キャリー=アン・モス)が撃っているのがこのマイクロ・ウージー。特殊効果とも相まって、強烈な印象を残す。
5)「スクリーンのイングラムM10」
■「マックQ」(McQ・1973・米)
たくさんの映画に登場しているが、おそらく本作が一番最初のメジャーな作品。M10は別名MAC10とも呼ばれていたので、このタイトルは驚き。狙いなのかも。主演のジョン・ウェインが大型サイレンサーを付けて使用したが、今やありふれた銃になってしまったので、その他大勢が使うことが多い。
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