●神崎進吾の名探偵紹介!●

 『アンナ』第2話登場の名探偵は、奇想天外なトリックや痛烈な風刺とユーモアで、かのホームズと双璧をなす短編推理小説の宝庫の主人公、ブラウン神父、その人であります。と言っても、1911〜1935に発表された作品群なので、現在の若い人達は知らないかもしれません。そこで、興味をもってくれた方々の為に、ほんの少しですが紹介させて頂きます。

【ブラウン神父(Father J.Brown)】
 ローマ・カトリックの神父。団子みたいに真ん丸な顔に丸い鼻がついて、眼をいつもパチクリさせている。不格好な小柄な体に大きな帽子とコウモリ傘という出で立ち。しかもその傘をしょっちゅう落したり忘れたりして、いかにも不器用で能のない貧相な人物にしか見えない。だが、途方もない探偵的手腕に恵まれており、パリ警察長官で世界的に有名な探偵ヴァランタンを向こうに回して、大 盗賊を苦もなくとっちめたこともある。その大盗賊こそ、後日、私立探偵の看板を掲げたフランボウであり、神父の相棒なのである。

○作者はG.K.チェスタトン。ブラウン神父物は全て短編であり、創元推理文庫から5冊に分けて出版されています。今回、参考にさせて頂いたのは、神父初登場の「青い十字架」収録の『ブラウン神父の童心』と「犬のお告げ」収録の『ブラウン神父の不信』(共に訳・中村保男)です。ラストの方で文明がつぶやくセリフは、この2冊の短編集を指しています。他に『知恵』『秘密』『醜聞』がありますので、興味ある方は是非、全て読んで見て下さい。どこかの漫画やTVドラマで見たことがあるトリックがかなり使われていて、その点からも楽しめると思います。
 
●前回同様、漫画の説明を少し。私は人名を考えるのが苦手なので、この作品では、実際の推理作家から名前を借りてしまいました。みゆきと薫は、すぐに想像がつくと思いますが、それでは由美は誰でしょうか。考えてみて下さい。ヒントはSF推理の名手です。
 文明のセリフで「クリスティーか安吾といったところか」というのがありますが、私の周囲では「意味が分からない」と不評なので、念のため、説明を。
 言わずもがなのアガサ・クリスティーと坂口安吾を指しているのですが、この場合、想起して頂きたいのはクリスティーの『ナイルに死す』と安吾の『不連続殺人事件』です。両方とも映画化されているので、ご存じの方も多いと思いますが、この2作品の共通点(安吾がパクッたという説もありますが)と今回の漫画のある一点が同じだということです。文明の推理小説好きを強調するために行いましたが、漫画内で細かく説明するとテンポが失われるので、この場を借用しました。漫画としては不親切で申し訳ありませんが、何卒ご容赦下さい。

 現在、第3話を鋭意、執筆中。登場する名探偵はフランス人。さて、誰でしょう。ラスト・スパートへの気力注入のためにも、漫画を読んだ感想など頂きたく、よろしくお願い致します。

                               神崎進吾/漫画街

 
 
 
 
 
 
 
 
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