●現時点で、このストーリーの中で先生が書きたいモノとはなんでしょうか?


皆が書いている「三国志」とは違うものを書かなきゃいけないんで、
そうすると、俺なりの「三国志」って言ったときに、
俺は日本をリンクさせないと面白くないな、
ただの史実になってしまうなと思ったの。
それで邪馬台国とリンクさせて作ったんだけどね。
そうすると全く新しいものになるだろう、
日本人が入ってくってことが「三国志」の歴史の中で…。
日本の本だから、
日本の読者にはそのほうが、割と興味を持って迎えられるんじゃないか
っていう読みというか、考えもあったしね。

HEAT』が終わるころ、
編集部から「三国志」の話が来たときに、
俺、日本人使うよってのは最初から言ったからね。
そしたら編集サイドが、
ああ、面白いですねって、
そういう形でいきなりトントンってなったから、
それはもう基本に置いといたから。
まず、主人公が日本人だっていうのは。
俺が書くんだったら日本人だよって。

その段階では、日本人がどう絡んで行くかってのは、
まだ空白だったけどね。
だけど、俺の中には「義経伝説」
(義経=ジンギスカン)っていうのがあって…、
前に書いてるの、『王狼』と『王狼伝』。
(第9回目参照)
あれはすごい手応えがあったの。
自分で書いてて、すっごい手応えがあって、
あのまま終わるのはもったいないって、
どっかで残ってたんだろうね。
だから、『王狼』やったろうかなっていうのがあった…。

日本の読者が中国の歴史劇を読むってさ、
誰が書いても同じになっちゃう気がするの。
だって、みんな引っ張り出すのは、
『正史三国志』や『三国志演義』で、
あとは北方謙三さんや、吉川英治さんの『三国志』で、
既成のものから引っ張ってくるしかないじゃない。
だから、俺は俺なりにかなり嘘付いちゃうよ
って思うわけさ。
でも、何、これ嘘じゃんって、
学者達が、多分そう言うかもしれないけれど、
じゃ、おまえ、見てきたのかよって。
そんなもん、平気で言えるわけでしょ。
ま、それが俺の強いところなんだけどね、ケツまくるの早いから。

ま、上手に嘘付きますよ。


●ほかの漫画の「三国志」は読まれたりしました?

あんまり読まない。
『蒼天航路』は、最初のころは読んでたかな。
あとは、ほとんど読んでない。
実は小説も読んでない。
編集がたくさん本を置いていったけど、
実は袋に入ったまま、そのまま置いてあります(笑)。
読まないって言うのに置いていくんだよ。
読んだら引っぱられちゃうから嫌なの。
だから、年表と、
登場人物がどういう事件にどうからんだかってのと、
あと、人の名前、当時のお金、州の位置関係とか、
そういうのはズラしちゃいけないから、
それだけは勉強しなきゃいかんけど。

編集に調べてもらうわけなんだけど…、
俺は一切勉強しないから。
俺は、こう描きたいと思ったら、ここを調べてくださいって、
それでやってるから、だから本は読んでいない。
北方さんの『三国志読本』ってメーキングブックがあるの、
それは読んだ。
ただ、北方さんも一切小説読んでないんだって。
そうじゃないと、自分が新しく作るとき、
引っぱられるから嫌なんだって。
一切見ないようにしてるんだって。

正しいよね。
自分のものを作ろうとしたら、人のもの読まないと思うよ。
北方さんが読んだのは、史実のほうの「三国志」、
これは精読したらしいよ。
すみません、あたし、それも読んでません(笑)。


●特別な取材等は?

してません。
年表見てたら、
184年に「卑弥呼、邪馬台国の女王になる」っていうのと、
「黄巾の乱が起こる」っていうのが、たまたまあったの。
で、おっ、使えるじゃんて(笑)。


●1話目に対する自分の手応えは?

1話目50枚でしょ。
で、2回目が40枚でしょ。
本当は90枚1発で書きたかったの。
そうすると、本当にひっくり返るとこまで行っちゃうから。

1話目はね、本当に序章。
まだプロローグなの。
2話目で、何これってなるの。
これはね、見た人達が多分ひっくり返るような
仕掛けがあります。
とにかく2話目見てからの話だな。

今(1話目)の段階で言うと、多分8割方の人が、
日本人の主人公・燎宇っていうのは、
諸葛孔明になるなってのが8割の人の意見なのね。
でも、その8割を俺が書いたら、俺はただの人だから、
それは絶対違う。


●1話目の原作で苦労された部分とかありますか?

苦労してるところってのは、やっぱりページの問題で、
どうしても書きたかったところまで入らないってとこで、
50枚で切って、その50枚の引きをどうするかって…、
次に期待を持たせないといけないから、
かなり何回も何処で切ろうかってとこで悩んで、
それがやっぱり…。

どうしても主人公だけ旅立たせるんじゃなくて、
劉備と関羽と張飛、3人絡めたかったからね。
そうしないと「三国志」にならないでしょ。
でも、そうこうしてるうちにページもうないのよ、
書きたいところまで。
だから結局、途中で割ろうということにして、
それが一番苦労したかな。

だから、手応えとしては、
1回目と言うよりは2回目まで行って、
どういう反響が来るかってのが、一番俺にとって興味がある。
それがこの作品の生命線かな。
で、2回目が俺が思ってるのと違う形で滑っちゃた場合には、
さあ、どうしようだね。
俺、終わったかもしんないって結構へこむかも。

でも、原作長く書いていて久しぶりにひっかかりというか、
これでみんなが驚いてくれなきゃあ困るぞって(笑)、
そういう思いがあったんだよね。
そのあとは、3回、4回と転がり出すから、
中国が舞台の「三国志」を、
俺なりにどうやって、
エンタテインメント性でふくらましていくかってことだから。
でもまあ、今までの「三国志」よりは面白くしたいね。
エンタテインメント性ってところでね。


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