●エニックスの少年ガンガン『天空忍伝バトルボイジャー』について


【編集メモ】

*『天空忍伝バトルボイジャー』
 1995(H7)年 月刊少年ガンガン9月号〜1997(H9)年 少年ガンガン2号 エニックス 漫画/結賀さとる
  5つに割れた魔人の子のひとりとして“陽”の紋章を持つ少年コウトの仲間捜しの冒険SFファンタジー。


ガンガンはねえ…。ファンタジー。
それはね、なんで口説かれたかっていうと、
とりあえず、ゲームになる、テレビになる、というところで…、
すいません、金で転びました(笑)って。

忍者の話だよね、スペース忍者とか…、
4巻だったかな。

漫画家は結賀さとるという女の子。
でねぇ…、やっぱりファンタジックな絵でしょ。
今の流行の…。
はっきり言って、
ファンタジーの絵って、みんな同じに見えちゃって(笑)、
ある意味、新鮮ではなかったんだよ。

ただね、受けたからには、
本当にテレビにもしたいし、ゲームにもしたいし、
やろうとしたんだけど、がんばったんだけど、難しかった。
やっぱりファンタジーの世界って、独特の世界で、
起承転結の世界じゃなくて、ロールプレイングみたいな形で、
ズラズラって行く形になってて、
そのへんで俺がちょっと見失っちゃったかな、方向をな。
うん、そういう感じがする。
俺がファンタジーを書くこと自体に無理があったと思う。
まぁ、ゲーム化、テレビ化って、そういうおいしい話で、
行ってしまった私が悪うございました、ですね。
月刊少年ガンガンの月2回刊化のころにやってるはず。

やってるのは全部、創刊誌とかリニューアル化とかでしょ。
双葉社なんかも…。
創刊誌だから、ちょっと興味があってやったんじゃないかな。
やっぱり頼まれるし、期待されてるとこあるでしょ、
創刊誌っていうのは。
それで、少し…、自分の中でモチベーションが上がるのかな。
そんな感じかな。

白泉社はアニマルハウスが、
ヤングアニマルになるころだったんじゃなかったかな。
平とじから中とじになるんで、
誌面強化って形で来たんだと思う。
本のリニューアルとか、創刊とかそういう形で、
なんとか協力してくれないかって言われると、
ちょっと弱いところがあって、スポッと行くよね。
もちろん、色気もあるし、ガンガンのときなんかはね。

あの程度のモノじゃ、さすがにテレビ化になんなかったな。
一生懸命書いたつもりなんだけどね。
タイトルもほとんど忘れてるようじゃ、ダメだよな。
気に入ったキャラクターいるんだけどね、
プリンっていうでっかいウサギで。


●『北斗の拳』と新潮社コミックバンチの『蒼天の拳』との違いは?

【編集メモ】

*『蒼天の拳』
  2001(H13)年5/29創刊号〜連載中 新潮社 週刊コミックバンチ 漫画/原哲夫 *武論尊先生は監修
 1930年代の魔都・上海を舞台に北斗神拳の伝承者・霞拳志郎が勇躍するハードアクション・ストーリー。

大きな違いは、原作を書いているかいないかが一番だけど、
結局『北斗の拳』は、俺が感じる男っていうのを原作で書いてたけど、
『蒼天の拳』は最初から起こしていないから、
あれは原哲夫先生と編集が感じる男のストーリーってことなんだろうね。

それはどっちがいいとか悪いとかいう話じゃなくて、
持ってる…、感じるものが違うんだよね、
原先生と俺とでは。
今の作品は、原先生が描きたかった男を描いているんだろうね。
美学…、男ってのはこうするものだ
っていう美学の基本的なところが、お互いに違うんでね。
だから、あれを俺に書けって言われても書けないし、
まぁ、でも外からアドバイスはできるけど…、
それを原先生が聞くか聞かないかは別として。
まあ、横にいてアドバイザーとしているってことなんだろうね。

主人公のモデルとして、原先生と編集の中では、
中坊林太郎(『公権力捜査官 中坊林太郎』集英社 月刊BART
1998年〜2000年)が男の生き方である
というようなこだわりがあるのよ。
そっちのこだわりがあるから、
それが『蒼天の拳』の拳志郎になったみたいな…。


●それでは監修という立場の意味は?

だから結局、方向性?
こっちのほうでいいんじゃないのとか、
もう少しこっちのほうがいいんじゃないのとか、
アドバイザー的な感覚でいるってことかな。
基本的に直す感覚ではなくて、あくまでも方向付けとアドバイス、
こうした感じにしたほうがいいんじゃない
って形のタッチの仕方だな。

でもまぁ、あまり方向が違ってしまったら、
連載の中止をさせられる権利は持っているってことかな。


●それ以外の出版社は…、
  常に3社のどこかでやってるから余裕もないと思うのですが?


あのね、なんか…、
使いにくい作家にどんどんなってっちゃってる
っていうのはあるでしょ。

言ってしまうと、傲慢な言い方になるけど、
大手3社なわけじゃないか、集英社、講談社、小学館。
そこでやってる作家ってのは、それなりに原稿料も高いし、
結構待遇もいいでしょ。
そうするとたとえば、編集サイドから考えて、
武論尊先生とか、史村翔先生とか、
欲しいなって言ったとしても、
やっぱり断られるだろうなって意識があると思う。
秋田書店の昔からの古い野球仲間とかゴルフ仲間とか、
編集いっぱいいるんで電話かかってくるんだけど、
こっちとしてもいい返事出来ないでしょ。
もう、仕事いっぱいいっぱいだから。
そうするともう、他でも待っててもらってるんで、
ちょっと今いっぱいいっぱいだからって、言うしかないから…。

多分ねえ、すっごく受け悪いと思う。
他の出版社からは、えらそうだなとか、
そういう印象持たれてると思うよ。
しょうがないことだけどね、現実問題として。
集英社、講談社、小学館の中でも、
仕事を…、ラッキーなことに待ってもらったり、
次はそっちやるから今回は勘弁してって、
そういう形でやってるから、
確かに他の出版社が入ってくる余地がないからね。

贅沢なことなんだけど、わがままなんだけど、
その出版社の中でも断ったり、待ってもらったりしてるわけだから。
他の出版社には書く気はあっても、
書くスケジュールはなかなか難しいよね。
だから向こうとしては、多分に使えない作家とか、使いにくい作家、
話を持って行っても断られるだろうなって作家に
なってっちゃっただろうから…。

仕方のないことなんだけど…、
俺が落ちぶれたときに、本当になんか全部外れて、
原稿お願いします、見てくださいって、
俺がまわって来たときに、うん…、
ザマーミロ、バカヤローって言っていただければ、
私も救われますよ。

(今、もしそれでもやる気のある編集が来たら?)

だから、自分のそういう弱さ知ってるでしょ。
ヤバイ弱さ知ってるから、
会わない!(笑)
なるべく会わないようにしてる。
ちょっと今忙しいんでって…。


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